札幌市のIT・コンテンツ・バイオ企業向け補助金の活用件数が2022年度、過去最多となる見込みだ。既に17件の申請があり、過去最多の12件(14年度)を大きく上回る。経済観光局の企業誘致担当者は「人材の豊富さやオフィス床増加が追い風になっているのでは」と分析。今後の伸びにも期待をかける。
22年度に申請した事業者は3DCG制作のカヤックポラリス(本社・札幌)やインターネット広告のシーエーアドバンス(同・那覇)、サイバーセキュリティー技術のアクト(同・東京)など。このほか、バイオ系で牛の体外受精を研究する企業が1社ある。 IT・コンテンツ系の企業が札幌に立地する利点の1つは人材採用のしやすさだ。公共職業安定所によると、22年11月の情報処理・通信技術者の有効求人倍率(フルタイム)は東京の3・15に対し、札幌圏は1・24と低位で買い手市場にある。情報系の大学や専門学校の存在が採用側には有利に働いている。
カヤックポラリスの親会社であるカヤック(本社・神奈川県鎌倉市)の柳澤大輔CEOも札幌で子会社を設立した理由を「クリエーター採用は競争が激しい。地元の人を採用したい狙いがある」と説明する。
コロナ禍で非接触やAIといった技術の需要が拡大したことも企業進出を後押ししているようだ。市はコールセンターやバックオフィスの立地促進補助金を運用するが、22年度の活用は5件ほどで例年並みだという。IT・コンテンツ関連補助金の伸びは顕著だ。
市は「大札新(だいさっしん)」をスローガンに、都心部の大規模再開発と連動して官民一体の企業誘致を強める考えだ。複数の補助金を一括計上する企業立地促進費でも、23年度は22年度の8億円からの大幅拡充を見込む。
IT・コンテンツ・バイオ立地促進補助金は06年度に制度化。現行では、市内に初めて事業所を置き正社員5人以上を採用する企業に対し、事業所開設費や人件費など最大3200万円を補助する。市内で増床か新事業所を置く企業にも最大1200万円の人件費を助成している。