ZEB化や地中熱利用など
2050年までの脱炭素化実現に向け、十勝管内で取り組みの輪が広がっている。国の先行地域に選ばれた上士幌町や鹿追町を中心に公共施設のZEB化や太陽光発電の有効活用を推進。他自治体でも将来的な再エネ設備導入を検討している。民間企業では、二酸化炭素(CO₂)を排出しない住宅の提案といった動きがある。全国屈指の日照時間を誇る十勝地方は、道内の脱炭素に向けたキー地点となり得る。(帯広支社・草野健太郎、太田優駿、城和泉記者)
既存施設の有効活用に活路を見いだす自治体が目立つ。中でも上士幌町は、現役場庁舎を減築して耐震化を図る。耐震補強に必要なコストを抑えるため、3階以上を削り、2階建てに改修。北大大学院工学研究院の森傑教授は「脱炭素は『作る・使う・壊す』で考えて、CO₂排出量のバランスを取ることが重要」と説く。
鹿追町は、役場庁舎などのZEB化改修を目指す。前例がなく慎重に進める必要があるが、着工可能な施設がまとまれば検討と並行して進める考えだ。加えて、環境省の重点対策加速化事業に採択された。既存住宅断熱改修や高効率給湯器導入を補助するため、6月の第2回定例町議会で補正予算案を上程し、早ければ同月に申請受付を開始する。
十勝は日照時間が長く、太陽光発電設備設置を検討する自治体が多い。帯広市は、市営住宅への設置を目指し、建て替えを進める大空団地での導入を検討。士幌町は、50年ごろまでに公共施設への設置率100%を目標に掲げる。広尾町は、特別養護老人ホームつつじ苑の建て替えに合わせた設置を視野に入れる。
足寄町は、30年までに温泉・地中熱を使った熱需要の脱炭素化、太陽光発電導入を推進する。建築では新設建物のZEB・ZEH化、既存建物の更新を基本とし、環境負荷を減らす方針だ。
大樹町はZEB基準を満たす新役場庁舎を22年1月に竣工。地中熱や太陽光発電、高断熱化などでエネルギー消費量を一般建築物の半分以下に抑えた。
民間企業では、北海道電力がスマート電化住宅を提唱。化石燃料を燃やさない仕組みを構築し、全てを電気でまかなう。太陽光発電との相性も良いが、個人住宅への設置は苦戦。ただ着実に地元工務店の関心は高まっていて、風向きは変わりつつあるという。
NTT東日本は、ぬかびら源泉郷(上士幌町)での温泉熱活用の可能性に注目。小水力発電を例に挙げ、高さ10mから流し、水車を回すことで電気を起こす。担当者は「排湯を1カ所に集める必要はあるが、選択肢になり得る」と期待している。