道立総合研究機構北方建築総合研究所構造計算適合性判定センターは3月から、構造計算適合性判定の図書付き事前相談を受け付ける。本審査の前に計算書や構造図などの関係図書を確認し、意見交換をすることで本審査の円滑化を図るのが目的。相談は無料。申し込みは任意だが、本審査と変わらない指導が受けられることから、追加補正資料の省略や完成度の高い建築確認書が期待できると見込んでいる。
構造計算適合性判定は、高さ20mを超えるRC造など一定規模以上の建築物について、都道府県やその指定機関が構造計算の内容、図書との適合性などを審査する制度。2005年の耐震偽装事件を踏まえ、建築物の安全性を確保する目的で始まった。
申請者(設計者)が建築物の形態・意匠と合わせ、建築確認申請として道や特定行政庁11市、指定確認検査機関に提出した上、建築主事が形態・意匠、審査機関が主事の依頼を受けて構造計算を審査。双方の適合性が確認されて、初めて建築確認申請が下される。
道内の判定依頼数は横ばい状態が続いていたが、13年度は消費増税前の駆け込み需要を受け、08年度に次いで多い488件、603棟となった。
判定件数の増加に伴い審査期間も長期化する傾向となったほか、14年までは道の指定機関が適判センターだけだったこともあり、駆け込み需要による繁忙期には「確認申請が下りるのに通常の倍近い時間がかかった」(札幌市内のゼネコン)という。
また、本審査の際に適合性を判断できない場合は、設計者にヒアリングや補正資料の提出を求めることから、追加の聞き込みを踏まえた審査に時間を要することも多かった。
事前相談では意匠図、構造図、計算書、地盤調査報告書、設備図などの関係図書を活用。適合性に不明な点があるときは指摘の上で回答を求めるなど、本審査と変わらない手続きを取る。本審査前に設計方針を聞き取り、関係図書の完成度を高めることで、建築確認申請自体の期間短縮が期待される。
北海道建築士会の高野寿世会長は「工事の遅れや冬季のずれ込みを防ぐことができる。最終的には道民のためになる良い制度」と歓迎。倉増英樹構造計算適合性判定センター構造判定部長は「施主によっては、追加資料などのない完璧な建築確認申請を好む場合もあることから、設計者にも図書付き事前相談を受けるメリットがある」としている。