北海道建設業協会(岩田圭剛会長)は、会員企業を対象とした2015年度景況感アンケートの結果をまとめた。完成工事高が10億円未満にとどまったと回答した企業は全体の6割を超え、前年度より減ったのは64.5%を占めた。公共投資額の落ち込みが反映し、これまでの堅調から一転。企業間の受注格差も生じている。また、高校や大学など新規学卒者の採用意欲は変わらず旺盛だが、多くの企業は公共事業量の見通しに懸念を示していることから、人材問題の解決に暗雲が立ち込めそうだ。
毎年1―12月を調査期間に実施しているアンケート。今回は道内に本社・本店を置く会員590社に依頼し、445社(回答率75.8%)が回答した。
完工高に関する質問では、10億円未満は296社と全体の66.5%を占め、前年度を7.5ポイント下回った。50億円以上が17社と3.8%に減り、10億円以上50億円未満は132社と29.7%にとどまった。
前年度と比べて金額が「減った」と答えたのは287社と全体の64.5%を数え、過去2年で最多。「増えた」は11%の49社にとどまり、2年前の13年度を37.1ポイント下回った。「ほぼ横ばい」は24.5%の109社で、2年連続の3割台から転落した。
「減った」とした企業の減少量は「30%以上」が55社で最も多く、次いで「15%程度」が50社、「30%程度」が47社と、深刻さを浮き彫りにしている。半面、「増えた」企業の増加量は「10%程度」の19社が最多。「30%程度」は6社、「30%以上」は4社と少数だが、工事量が減少する中、企業間の受注格差が著しくなっている。
最も懸念することとしては「公共事業の見通し」が73%の324社に上り、前年度の56.4%を大幅に上回った。「若手技術者の育成・確保」が15.7%、「高齢化による人手不足」が10.1%に後退し、企業経営の不透明さが人材の設備投資に陰りをもたらしている。「労務費、資材価格の高騰」は0.9%とわずかだった。
利益確保については「工事によって利益を確保」が35.3%の157社で最多。「赤字ではないが厳しい状況」は30.8%に下がり、前年度の順位を逆転した。採算割れといった利益が得られにくい受注環境が台頭し始め、「本社経費を除くと利益はない」は24%ある。
金融機関の融資対応については、84.7%の377社が「状況に変わりはない」で前年度と同じ。ただ「従前より厳しくなった」が8.5%に増えた一方、「多少緩和された」は2.7%にとどまり、融資環境にも厳しい状況が出てきている。
最近の資金繰りは「厳しい状況に変わりはない」が79.1%の352社を占めた。「従前より悪化」は14.8%とやや増加し、「若干好転した」は5.2%と微減した。
新卒者採用の質問で、15年度は171社が高校、専門学校、大学(大学院含む)の新卒者を計342人採用した。企業数は9.6%、採用人数は7.5%それぞれ上回り、建設市場の回復と人材獲得の産業間競争で求人意欲が高まった。
16年度の採用予定は、高卒が151社265人、専門学校卒が42社58人、大卒46社91人の計239社414人。前年度の企業数と採用人数は上回るものの、1社当たりの採用は、高卒が平均1・8人で0・1人、大卒が2人で0・4人それぞれ減少している。
道建協に希望する講習会としては「技術力向上」に関するものが最も多かった。次いで「入札制度」が前年度の「経営改善」を逆転し、2年前の順位と同じくなった。