台風10号の大雨による被害で通行止めとなっている国道274号日勝峠で、少なくとも3橋が落橋したほか、複数箇所で道路が斜面もろとも崩壊するなど甚大な被害の一端が明らかになってきた。これ以外にも多くの被災箇所が見つかっていて、被害の全容はまだ分かっていない。復旧には相当な費用と時間がかかる見通しで、北海道開発局は引き続き調査を進めている。
開発局は1日から被災状況をヘリコプターで確認している。清水町側の7合目と8合目で土砂が道路ごと流出。7合目付近では斜面がえぐられるように崩れ、崩壊箇所では水が流れていた。8合目付近では石山トンネルの清水町側入り口付近で、道路ごと斜面が崩壊した。
帯広開建は、大量の水が沢に流れ出たことで道路横断管がのみきれなくなり、谷側の路肩から崩れてた可能性を示唆する。
日高町側では、これまで落橋を確認していた千呂露橋より上流にある岩瀬橋とニセクシュマナイ橋でも落橋していたことが分かった。岩瀬橋は橋長62m、幅員7・5mの2径間PCT桁橋で、1973年に架設。ニセクシュマナイ橋は2000年に完成した非合成2径間折れ線鉄桁橋で、橋長51m、幅員9・5m。このほかに、日高町千栄で河川に接近している道路が崩壊していた。開発局では沙流川に近い地点を通る箇所のほとんどで何らかの被害を受けているとみている。
同様に通行止めが続く国道38号狩勝峠は、南富良野町落合で延長40m、幅7mにわたって法面が崩壊。山伏パコム(本社・富良野)が復旧作業に当たった。十勝管内では新得町新内で盛り土部分の道路が崩れた。帯広開建は現況の調査を完了し、早急に上川方面へのアクセスを確保するため、応急復旧の工法や工期を検討している。
開発局の担当者は「道路でこれほどの被害は過去に例がない」と驚いていた。
河川も大きな被害が出ている。国管理区間では5カ所で堤防が決壊した。空知川は南富良野町の38号太平橋付近の左岸が100m、太平橋から約800m上流の左岸が500mそれぞれ決壊。札内川は帯広市内の戸蔦別川との合流地点で左岸が200m、中札内村の上札内橋から約1㌔下流の左岸が200mいずれも決壊した。音更川では士幌町の音和橋から約500m上流の左岸が150mにわたり決壊した。
開発局がまとめた台風10号による大雨の各河川の出水状況によると、設計上堤防が耐えられる水位の上限としている計画高水位を超えたのが、十勝川と札内川の2河川だった。十勝川本川の茂岩観測所(豊頃町)では、計画高水位11・61mに対して8月31日午前11時ごろに12・68mを観測。1981年の〝56水害〟の水位を上回り観測史上最高となった。この地点の計画堤防高は13・61mあり、付近にある豊頃町の市街地の標高は低い地点で7mほどしかないことからも、当時、非常に高い水位を記録していたことが分かる。
開発局では、ダムの洪水調節機能の効果も併せて発表した。
幾寅地区の下流にある金山ダムでは、雨がピークを過ぎた8月31日午前3時ごろ、上流の山間部から毎秒約1500m³の水がダムに流入。一方、下流への放流は毎秒200m³余りとし、下流の増水を抑制した。開発局によると、富良野市布部付近で、2・3mの水位低減効果があった分析している。ただ、ダム上流の南富良野町では大きな被害を受けたことから、今後は、上流を含めた洪水対策が求められる。