風力発電の導入拡大に向け、道北で送電網を整備する北海道北部風力送電(本社・稚内、伊藤健社長)は、一連の整備を2018年秋に本格着工する予定だ。延長は約80㌔で、総事業費は約500億円。21年秋の完成を目指す。整備に伴う資器材の調達などに一定の時間がかかるため、同社はことし12月末までに施工業者を決める必要があるとしている。
風況に優れる北海道北部は、国内でも指折りの風力発電適地だが、電力需要が少なく送電網が脆弱(ぜいじゃく)なことから、風力発電の導入拡大の課題となっている。
このため、国の補助を得て、実証事業の位置付けで北海道北部風力送電が送電網を整備する。同社はユーラスエナジーホールディングス(本社・東京)、エコパワー(同)、稚内信用金庫、北海道電力、北海道銀行、北洋銀行が出資している。
現在、詳細設計を進めている段階だが、送電網は中川町、天塩町、幌延町、豊富町、稚内市を通る内陸側のルートで検討し、延長は18万7000仕様が68・7㌔、6万6000仕様が7・5㌔の計76・2㌔で計画。中川町で北電の変電所に接続する。
電力線などを渡す鉄塔は265基を予定し、地形などによって異なるが、鉄塔間の距離は約350m、高さは40―60mを基本とする。併せて、変電所を1カ所、開閉所を2カ所整備する。
送電網としての受け入れ可能量は約30万㌔㍗。一方、想定している風力発電所からの接続量は約60万㌔㍗で、この約30万㌔㍗の差をどう扱うかが実証事業のポイントになる。
風力発電は風況による変動が大きく、場合によっては受け入れ上限との差が大きくなる。このため、実験では受け入れ容量を上回る風力発電設備と接続。上限を超える場合は送電側から発電量を制御し、送電網を最大限に有効活用するシステムの構築を図る。
伊藤社長は「これまでは受け入れ容量と同規模の発電所しかできなかったが、この実験を通し、容量の倍の発電所の建設も可能になるのでは」と話す。
建設工事の発注に当たっては、複数年度にまたがっての発注が可能か、競争入札や随意契約など具体的な入札方法を関係機関と協議中。
送電線工事には特殊な技術が必要で、道外でも複数の送電線整備が控えていることなどを踏まえ「補助金の関係上、契約は18年度となるが、遅くても年内に施工業者を決めないと人や物の確保が難しい」(伊藤社長)とみている。
今回の送電網整備は1次計画の位置付け。本道の風力発電のポテンシャルの高さから、風力発電容量約80万㌔㍗とする2次計画も持っているが、北電の受け入れ可能量などがあり、現時点では具体的なルートや着手時期は未定だという。