無知ゆえのことだが、子ども時分は台風が来ると何か普段と違うことが起きそうでわくわくしたものである。ところが年を重ねてくると感じるのは不安ばかり
▼近年、雨の降り方や風の吹き方が激しさを増し、通り過ぎる地域に、ことごとく深い傷跡を残していくからだろう。時間降雨量で、瞬間最大風速で、本来はめったに出ないはずの「観測史上初」の言葉が頻繁に聞かれる。あらためて考えれば異常な話である。今回、日本列島を襲った台風18号も九州、四国、本州、北海道の全てに上陸した観測史上初の台風だったという。本道到達前に温帯低気圧に変わる例も多いのだから、今回の台風がどれだけ膨大なエネルギーを持っていたか分かる。やはり地球温暖化の影響だろうか
▼「台風過全身打撲の如き稲」成子利美。それが心配だったに違いない。大分で田んぼの様子を見に行った男性が行方不明になっている。香川では崩れた裏山の土砂の下敷きになり女性が死亡したそうだ。悲しい被害も後を絶たない。こんな言い方が適切かどうか分からないが、雨の降り方などが激変している以上、それとうまく付き合う方法を学び直す必要があるのではないか。これほど観測史上初が頻発しては過去の知識に頼るのにも限界がある
▼東日本大震災を経験したアベナオミさんが著書『被災ママに学ぶちいさな防災のアイディア40』で「想像力こそ防災力」の考えを紹介していた。災害状況を自分の頭で想像することで防災力が磨かれるという。観測史上初の先にある危機を捕まえられるのなら何でも試してみたい。