コラム「透視図」

だましの技法

2019年09月19日 09時00分

 アクション映画の制作に欠かせない特殊撮影技法といえば「ワイヤーワーク」だろう。演技者の体に金属や特殊繊維のワイヤーをつなぎ、離れた所から引っ張ることで人間業とは思えない動きを演出。常人をはるかに超える身体能力で、飛んだり跳ねたりしているように観客には見える

 ▼ハリウッド映画なら、人間と仮想現実を支配するコンピューターとの死闘を描いた『マトリックス』の戦闘シーンが分かりやすい。われわれ年配世代になじみ深いのはワイヤーワークの元祖ともいえる香港のカンフー映画である。まだ仕掛けを知らなかった昔、ヒーローたちは厳しい鍛錬を長年積み重ねてあの人間離れした体術を会得したものと信じていた。制作側にしてみれば何と素直で良い客だったことか

 ▼今は身体能力を高く見せる効果を出すのに、そんな大掛かりなワイヤーワークを持ち出すまでもないようだ。もっと手間のかからない簡単な方法が使えるのである。どうやらつまみをちょちょいとひねればいいらしい。TBSが8月に放送した娯楽ドキュメンタリー『消えた天才』で、当時12歳の少年の投球映像をひそかに2割ほど早回しし、視聴者をだましていたそうだ。動機はリトルリーグの全国大会で完全試合を達成したすごさを表現するため

 ▼見ている方は本物を伝える番組にうそが混ぜ込まれているなど考えもしない。TBSにしてみれば単純で良い客だったに違いない。放送倫理・番組向上機構はこの番組の審議入りを決めた。落ちた信頼ばかりは、ちょちょいと回復というわけにはいかないのである。


福島の水処理と韓国

2019年09月18日 09時00分

 人間の性質について徳冨蘆花は1898(明治31)年に発表した小説『不如帰』で、ある人情博士にこんなことを語らせていた

 ▼「世の中の事は概して江戸の敵を長崎で討つものなり。在野党の代議士、今日議院に慷慨激烈の演説をなして、盛んに政府を攻撃したもう。至極結構なれども、実はその気焔の一半は、昨夜宅にてさんざんに高利貸を喫いたまいし鬱憤と聞いて知れば、ありがた味も半ば減ずるわけなり」。国会で代議士が激しく政府を批判しているが、それは前の日に借金をしたことによる腹立ちまぎれの行動だったというのである。筋違いでもいいからとにかく誰かに仕返しをしたい。世間ではよくあることかもしれない

 ▼とはいえ国際社会で責任ある国がこの手の行為に及ぶのはいただけない。16日の国際原子力機関年次総会で、韓国が東京電力福島第1原発の処理水に関し、海洋に放出されると「世界の海洋環境に影響する」と論難した件である。輸出入管理の敵を福島原発で討つつもりらしい。処理水は今、タンクに貯蔵されている。風評被害の懸念から最終処分方法が確定しないためだ。海洋放出と決まればさらに多核種除去装置「ALPS」を通しトリチウムだけが残留した水となる。世界中の原発が毎日海洋に放出しているのと同じ、環境に影響のない水である。韓国の原発も例外でない
 
 ▼福島の水と通常運転中に発生する水とは違うとの印象操作で日本に揺さぶりをかけたつもりだろうが、科学的根拠があるはずもない。江戸の敵を長崎まで追い掛けてもやはり空振りのようである。


ゆきどけ

2019年09月17日 09時00分

 ものまね番組が好きで、ひところは放送があると必ず見ていた。面白い新人も次々出てくる競争の激しい世界だが、その中で人気実力共に優れ、長く愛されているタレントといえばコロッケさんだろう

 ▼レパートリーがとにかく広く、演歌の北島三郎からダンス系J―POPの「DA PUMP」まで何でもござれ。ただまねをするのでなく、その歌手の顔形や動きの特徴をつかみ、誇張して見せるのが抜群にうまい。ところが苦労はあるもので、表現を不快と感じた歌手やファンに怒られることも昔はあったそうだ。今はそれもないらしい。コロッケさんは出演番組で「まねをするのはその人が好きだから」と語っていた。気持ちが伝わったのだろう

 ▼お笑い事務所吉本興業の思いが石屋製菓(札幌)に伝わるまでにも随分時間がかかったようだ。「白い恋人」をまねして「面白い恋人」を販売した吉本を石屋が提訴したのが8年前。両社は近く共同開発した菓子「ラフ&スイーツ ゆきどけ」を売り出すという。吉本にしてみれば北海道を代表するお土産に敬意を表する部分があったのかもしれない。べたなネーミングも実に「らしい」。とはいえ外見までそっくりにして、いらぬ混乱を招いたのはまずかった

 ▼2013年に和解したものの、両社の間では冬の時代が続いていたのである。今回は石屋が関西初出店を機に、吉本へ共同開発を提案。とんとん拍子に話が進んだと聞く。「ゆきどけ」は白色で、口に入れるとほんのりほろ苦いという。さて誰かがまねしたくなるほどおいしくできているだろうか。


千葉の停電

2019年09月13日 09時00分

 ことわざに「雨晴れて笠を忘る」がある。雨が降っている間は体の一部のようになっていた笠なのに、晴れたときにはもう頭の中から消えていたというのである。現代なら笠でなく傘だろう。当方もいったい何本買い直したものやら

 ▼どうやら人は忘れっぽい生き物のようだ。傘に限らない。電気もである。胆振東部地震から1年が過ぎ、それが当たり前に届けられるありがたさを忘れかけていた人も多いのでないか。台風15号の影響により暴風が吹き荒れた千葉県全域で停電が発生していると聞き、昨年本道で起きたブラックアウトの記憶がよみがえった。生活を支え、人の命を守る電気が断たれ、情報も物流も回らない。便利な暮らしも足元は案外もろいことを実感させられた

 ▼千葉県では発生から4日たったきのう午後5時現在でなお31万軒以上が停電していた。東京電力はもとより、北海道電力など全国から技術者が続々と現地に駆け付け、自衛隊や消防、警察と協力しながら早期復旧に努めているそうだ。道民がそうだったように県の方々もきょう回復するか、あしたこそはと祈るような思いだろう。酷暑の中でエアコンが使えず、冷蔵庫も役立たない。水が出ない所もあるというから事は緊急を要する

 ▼送電塔が2本倒れ、電柱損壊は数知れず。倒木のため現場に近付けない所も多く、作業は難航を極めているのだとか。一日も早く安全な暮らしが戻るよう願うばかりである。日本ではいつ災害に襲われるか分からない。晴れている日も傘のありがたさを忘れず、もしものときの備えもしておきたい。


内閣改造

2019年09月12日 09時00分

 優れた組織とは―。組織人なら誰でもその答えを探していよう。経営評論家大橋武夫氏は著書『兵法 孫子』(PHP文庫)でサッカーやバレーボールのチームを答えの一つとして例示していた

 ▼いわく、「どこへボールがとんで来ても、全選手が機敏に反応して行動を起こし、遊んでいるものはない」。ボールから離れていて動いていない選手も常に作戦を意識し、すぐに行動できる態勢が整っているというわけだ。こちらの組織は理想のチームに仕上がったのだろうか。第4次安倍再改造内閣がきのう発足した。ざっと見て気付くのは、在職日数が歴代2位となった今も変わらぬ安倍首相の意欲である。全19閣僚のうち13人を初入閣させる大胆な入れ替えで、息の合う議員を多数迎え入れた

 ▼何より政権の最中枢である麻生太郎副総理兼財務相と菅義偉官房長官はそのまま残し、「地球儀を俯瞰する外交」を両輪で進めてきた河野太郎前外務相は防衛相に横滑りさせている。皆が同じ目標を向いたチームは強い。首相の掲げる「安定と挑戦の強力な布陣」とはそのことだろう。国政では消費増税や社会保障改革、憲法改正、外交では自由貿易の推進や歴史問題、軍事対立など日本の前には多くの難題が横たわっている。政権が盤石でないと解決の糸口さえ見つけられない

 ▼一つ心配なのは、少したつと往々にしてボールを無視して遊びだす者や勝手なプレーで試合を台無しにする者が現れることである。持論に固執した監督が暴走する展開もないとはいえない。さてこのチームはどれだけ点数を挙げられるか。


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