コラム「透視図」

参院選終わる

2019年07月23日 09時00分

 ほとんどの人は子どものころ、砂場や海辺で砂山を作って遊んだ経験があるに違いない。誰が一番早く高い山にできるかを友達と競い合ったりして。ただこれが案外難しい。砂がさらさらだといくら砂を盛ってもすぐに崩れ、なかなか高くならないのである

 ▼三好達治の詩「砂の砦」にもこんな一節があった。「私は築く/私のうたは砂の砦だ/無限の海にむかつて築く/この砦は崩れ易い/もとより崩れ易い砦だ」。今回の参院選も与党、野党ともに砂山を作るような戦いだったのでないか。結果にもそれが如実に表れている。与党側は過半数を超え実質勝利したとはいえ改選前より議席を減らし、一方の野党側も議席こそ増やしたものの与党の安定を脅かすほどの勢いは見られなかった

 ▼つまりどちらも目指したほど高い山は作れなかったのである。積んでも積んでもどこかから票が崩れていく。与党は経済や外交などこれまでの実績をアピールし、野党は明確な対立軸として消費増税反対を掲げていたのだが。崩れ易い砂山も裾野を広げれば高くすることができる。ところが与党支持層の中から消費増税反対派が滑り落ち、さりとて野党はいまだその受け皿になれるほど広範な信頼を勝ち得ていない。これではいくら頑張ったところで有権者は端からこぼれ落ちていく

 ▼投票率が48・8%と5割を切り、戦後2番目に低くなったのもそんな人々のあきらめを反映していよう。今回のように希望の持てない事態が続けば、選挙は砂山どころかいずれ不毛な砂漠と化す。国会議員はそのことを自覚した方がいい。


FBのリブラ

2019年07月22日 09時00分

 社会に背を向けた若者の暴走を描いて、当時圧倒的支持を受けた米映画『俺たちに明日はない』(1967年)をご記憶の人も少なくないだろう。名優ウォーレン・ベイティが監督、主演を務めた犯罪ロードムービーである

 ▼ベイティ扮(ふん)するクライドと恋人ボニーを中心とする強盗団が銀行襲撃を繰り返し、追っ手と激しくやり合った揚げ句、ついに破滅するまでを描いた。衝撃のラストシーンが印象に残る。映画の設定は29年の世界大恐慌のころ。この時代は銀行が金庫の中身を奪われてしまえば預金者は諦めるしかなかった。現在は違う。銀行が破綻しても一定の範囲で預金は守られる。多くの国に預金者保護の仕組みがあるのだ

 ▼世界的SNSの米フェイスブック(FB)が発行を計画する暗号資産「リブラ」で懸念されるのがその資産保護だという。国が管理する通貨でないため、法の縛りがない代わりに保護もなし。FBがつぶれたり、盗まれたりした場合は保有資産が露と消える可能性もある。リブラは27億人の利用者がネット上で使える「お金」。使いやすさに優れる。世界にはスマホはあっても銀行口座のない人が大勢いるため、そんな人でも送金や取引、運用が楽にできるようになる

 ▼ただFBはこれまで顧客情報の流出を繰り返してきた。膨大な資産を動かす企業として信用して良いか。先週開かれた先進7カ国財務省・中央銀行総裁会議の関心もそこだった。いくらFBが安全を主張しても、現代の「ボニー&クライド」ハッカーに襲われたらひとたまりもないかもしれないのだ。


韓国への輸出管理見直し

2019年07月19日 09時00分

 目の前の出来事を言い表すのにぴったりのことわざを見つけたときはうれしいものである。絵本作家の五味太郎さんがそんな発見を『ことわざ絵本』(岩崎書店)としてまとめていた

 ▼例えば「藪をつついて蛇を出す」は「そうっとしておけばよいものを、わざわざ藪をつついたものだから蛇が出てきてしまった!という様子」と説明。その横に絵が描いてあり、「思いがけなく大掃除」とタイトルが付けられている。どういう意味か。五味さんの解説はこうだ。「あいつがちらかしたよ」と先生に言いつけたら、「じゃ、あなた掃除してね」と逆に自分の仕事を増やす結果になってしまったというわけ

 ▼韓国の文在寅大統領も挑発的な発言をしたせいで対立深まる日韓関係を一層悪化させ、仕事を増やす結果を招いたようだ。報道によると日本が韓国に措置した輸出管理の運用見直しに対し、文氏が「日本経済に、より大きな被害が及ぶことになる」と警告したのだとか。まさに「藪をつついて蛇を出す」である。今回対象となった特定品目は、もともと安全保障上の観点から輸出規制がかかっていた品。従来は両国の信頼関係に立脚して規制を緩めていたものの、韓国内でのずさんな管理が明らかになり、運用を見直さざるを得なくなったのである

 ▼五味さんの絵本では、「雨ふって地固まる」にこんな例えを添えていた。「事件が起きてかえって物事がよい方へすすんだ、というような…。ふしぎなようだけど、時々あることで…」。そうなるといい。まずは韓国が輸出管理に関して襟を正すことからだが。


トムラウシ山大量遭難

2019年07月18日 09時00分

 ことしの5月、久々に春山で雪渓歩きをしたいと思い、芦別岳に登ってきた。頂上へ向かうには新道、旧道、本谷の3コースがあるが、当日は単独行のため最も難易度の低い新道を選んだ

 ▼易しいとはいえ急峻な芦別岳。頂上直下は雪の急斜面が続き、滑落すれば最悪命を落とす危険もある。それだけに準備は入念だ。登山靴を手入れし、簡易アイゼンは新調した。山特有の天候急変に備え、防水防寒装備も携行する。何より大切なのはどうなったら登山を中止するのか事前に決めておくことだ。人には前に進みたい欲求があるため、成り行き任せで頑張りすぎると引き返せない所まで行ってしまう。パーティーならリーダーの資質が試される場面でもある
 ▼それらがことごとく欠けていたのは残念というほかない。大雪山系のトムラウシ山で縦走ツアーを楽しんでいた登山客ら8人が死亡した2009年の遭難事故から10年が過ぎた。皆さん山をこよなく愛する方々だったろう。あらためてご冥福をお祈りしたい。遭難の原因は体力の低下が低体温症を招いたこと。悪天候を突いて無理に行動したのが災いした。7月にしては気温が低く、風雨も激しかったという

 ▼筆者も4回、トムラウシ山に登ったことがある。9月にトムラウシ温泉から入ったとき、予報は晴れなのに上で猛吹雪に襲われた。ちょうど先の事故が起こった辺りである。吹きっさらしで身を隠す場所はほとんどない。われわれは頂上を諦め、冬装備に身を固めて真っすぐ避難小屋へ向かった。山では欲求に反する決定が時に命を守るのである。


007が黒人女性に

2019年07月17日 09時00分

 バラク・オバマ氏が黒人として初めて米国大統領(第44代)に就任したのは2009年のことだった。根深い黒人差別の歴史を持つ英米社会にとっては、時代の転換を感じさせるほどの画期的な出来事だったらしい

 ▼実際にはオバマ氏は黒人の父と白人の母から生まれたハーフで奴隷の子孫でもない。それでも肌の黒さに特別な意味を与えてきた社会を揺さぶるには十分だった。心ない中傷をする人も多かったようだ。黒人を差別してきた過去を持たない日本人がそれを生々しく実感するのは難しい。ただそんな日本人もこちらの話には戸惑いを感じるのでないか。史上最も有名な秘密情報部員が黒人女性になるかもしれないというのである

 ▼来年公開予定の映画「007」シリーズ最新作でこのコードネームを黒人女優ラシャーナ・リンチさん演じる新キャラクターが引き継ぐ設定になっているのだとか。ジェームズ・ボンドの相手役の話ではない。時事通信によると、英メディアがおととい一斉に伝えたそうだ。ショーン・コネリー主演で1962年に公開された第1作『007 ドクター・ノオ』から60年近く続くシリーズである。ファンの多さと親近感でいけばきっと世界的にはオバマ氏以上に違いない。もっともボンド役が代わるのでなく、ボンドが引退して空席になった「007」に後釜として入るようだ

 ▼これも黒人の米国大統領が誕生した、世の中から差別をなくしていく流れと全く無縁ではないのだろう。それにしてもあの屈強で色を好む「007」ボンドまで…。一抹の寂しさなしとしない。


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