コラム「透視図」

ファーウェイの5G

2019年05月24日 09時00分

 世界規模でインターネット関連事業を展開する「グーグル」の脅威論がひところ話題になった。あらゆる情報を手中に収めようとしているからである

 ▼パソコンやスマホが浸透し、今やグーグルと無縁でいる方が難しい。サービスを使うことで利用者は人物像から趣味、好み、思想、行動範囲に至るまで多くの個人情報をグーグルに渡すことになる。となれば、その情報を活用して人々を操ることもできるというわけ。この脅威論が下火になったのはグーグルも一企業にすぎないとの認識による。信頼を裏切ったり、別の企業がより便利なサービスを提供したりすれば利用者はすぐにグーグルを見限るだろう。市場原理の優れた側面である

 ▼ところで同じ意図をもし国が持つとなると脅威は一企業の比ではない。世界のあらゆる情報を一手にできるなら、自国に有利な方向に人々を誘導するのも容易だろう。焦点となるのが現在、米国と中国が世界市場制覇に向けしのぎを削る5G(第5世代移動通信システム)だ。中国は通信企業ファーウェイ(華為技術)を表看板にそれを進める。米国は警戒心あらわ。世界標準となればファーウェイ網が世界を覆う。そのシステムに「裏口」があり情報は中国に筒抜けというのが米国の主張である

 ▼真偽は不明。ただ中国はAIIBで金融、一帯一路で物流、海軍増強で軍事と自国中心の世界秩序再編を目指す。情報だけ戦略にないとは考えにくい。日本、英国と米国に倣う国も増えてきた。情報が兵器に優る時代だ。民主主義でない国がそれを握るのはやはり脅威である。


消費税率アップ

2019年05月23日 09時00分

 経営の神様とも称されるパナソニックの創業者松下幸之助は『人生心得帖』(PHP研究所)の中の「人情の機微」で、以前聞いた話としてこんな逸話を紹介している

 ▼明治政府が初めて所得税を導入しようとするとき、税務署が大阪の金持ちたちを一流のお茶屋に招待した。不安な気持ちを抱きつつ出席した彼らの前に現れた税務署長は、末席に着いて丁寧に所得税の趣旨を説明。礼を尽くして協力を願ったそうだ。松下氏は語る。官尊民卑の時代だから呼び付けて命令しても良かったはずだが、「こうした人情の機微にふれる態度や配慮というものが、お互いの日々の生活においても、やはりきわめて大切ではないか」

 ▼翻って10月に引き上げが予定される消費税である。国民の間に納得感は広がっているだろうか。今は官尊民卑の時代ではない。税金は助け合いの仕組みだとの認識も浸透していよう。それでもどこかふに落ちないのは、政府や財務省に人情の機微に触れる態度や配慮が足りないからでないか。政府側は税率が8%から10%へ、ごく小幅に増えるだけと考えている節がある。景気減速が鮮明になってきているのに、参議院選が控えているせいかこのところ積極的な発信がない。協力を求めるに大事な時期なのにもかかわらずである

 ▼国民にしてみれば健康保険や介護保険、年金といった社会保障負担が年々重くなる中での、さらなる2%増である。当方などは江戸時代の石責めの刑をつい思い浮かべてしまう。下座に座って頭を下げる必要はないが、押し切れば何とかなるという態度も違う。


天気不安定な5月

2019年05月22日 09時00分

 屋久島で縄文杉観光を楽しんだ300人余りの登山者らを立ち往生させた18日の雨は、50年に一度の豪雨だったそうだ。時間雨量が史上最多の100㍉に達した時間帯もあったというから、いかに雨の多い屋久島でも想定外の出来事だったに違いない

 ▼筆者も20年ほど前に同じ道を歩いた。登山道代わりのトロッコ道はよくこんな崖地に線路をと感心するくらいの箇所も多い。あの雨の中での歩行は難儀を極めたろう。土砂崩れなどで身動きが取れなくなっていた人々は、災害出動要請を受けた自衛隊や警察の懸命な救助活動により翌19日までに全員無事下山した。命を落とす人が出ず本当に良かった。迅速、的確な活動のたまものだろう

 ▼日本の南の屋久島を豪雨が襲ったかと思えば、北の本道では暴風である。道東自動車道の浦幌町付近で20日、風に巻き上げられた土ぼこりのため目前の車が見えないほどの視界不良が発生。バスやタンクローリー、乗用車合わせて10台以上が絡む多重交通事故を引き起こした。この北と南の気象現象、関係がないようで実は原因が同じ。日本列島を挟み太平洋に強い高気圧、日本海に低気圧が居座り勢力が拮抗(きっこう)したため、高気圧から吹き出した強い風が南には大量の水蒸気をもたらし、北では地吹雪のような土ぼこりの嵐を生んだのである

 ▼5月の日本は寒気と暖気が頻繁に入れ替わり、天候の急変に戸惑うことも少なくない。外出先で不測の事態に遭遇することもあろう。いざというときパニックに陥らないよう、今時期は空の表情に神経を研ぎ澄ませたい。


サッカーで誤審

2019年05月21日 09時00分

 あまり軽々しく使ってはいけないと分かっていても、何かあるとつい口から出てしまうひと言に「ばか」がある。覚えのある人も少なくないのでないか。悪気のない失敗に半ばあきらめの気持ちを込めて言う「ばかだなー」から、取引先の信頼を失墜するへまをやらかした上に反省もしない部下を叱責するときの「ばか野郎!」まで。状況によって度合いは異なるが、相手の間違いを何かしら非難する点は変わらない。ばかは漢字で「馬鹿」と書く。俗説では秦の高官趙高が皇帝に、「珍しい馬がおりました」と鹿を献上した故事からきているという。「いえそれは鹿でございます」と進言した家臣は皆処刑された。「私が馬と言えばそれが馬」というわけだ

 ▼秦の高官ほどの力はないにせよ、サッカーの主審の権威もピッチの中では絶対である。その主審が17日のJリーグ「湘南ベルマーレ―浦和レッズ」戦で、どう見ても明らかなゴールをノーゴールと判定した。見ていた誰もが「そんなばかな」と思ったろう。湘南の杉岡大暉選手のシュートは右ポストに当たって跳ね返り、左のネットを揺らした。たぶん双方の選手も観客も誰もがゴールを認識していた。ところが主審だけは見逃していたらしい

 ▼湘南が猛抗議するも判定は覆らず、鹿が馬にされたままゲームは続行されたのである。得点を先行された湘南は最後に見事な逆転ゴールを決め勝利したが、それで誤審が帳消しになるわけではない。日本だからかろうじて「ばかだなー」で済んだものの、欧州や南米なら暴動が起きていてもおかしくなかった。


ロスジェネ

2019年05月20日 09時00分

 どうしてこんな境遇に生まれてしまったか―。そう嘆く人も少なくなかったようだ。江戸時代の「部屋住(へやずみ)」の話である

▼武家でも商家でも、家を継げるのは嫡男のみ。次男以下は他家へ婿入りできなければ家に残って家長に養われるしか道がなかった。そんな者たちを部屋住と呼んだのである。大した仕事は与えられず結婚も許されない。生まれた順番が違っただけでである。運命を恨むのも当然だろう。日本のロストジェネレーション、いわゆる「ロスジェネ」も当時の部屋住と同じ悲哀を味わっているのでないか。バブル崩壊後の1990年代後半から00年代前半にかけての「就職氷河期」に世に出、安定した職に就けないまま40歳前後になっている人々のことである

▼仕事が非正規で収入が安定しないため、親の元で暮らし結婚に二の足を踏む人も多いと聞く。採用を絞ったのは企業側の都合なのに、経験もなく使いづらいからとやはり今も敬遠されがち。運命のいたずらとはいえ酷な話である。高齢化と人手不足に悩み外国人材受け入れを拡大しようとまでしている日本なのに、本来働き盛りの世代が活躍できる場はないときた。ロスジェネにとっては江戸封建時代と変わらぬ理不尽な世の中だろう

▼政府が先月、ようやく重い腰を上げた。経済財政諮問会議がロスジェネを「人生再設計第一世代」と位置付け、再チャレンジ支援の実行プログラムを今夏に打ち出す方針を固めたのである。かつて部屋住から剣豪や学者が輩出したように、ロスジェネのピンチもチャンスに変えられるといい。


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