コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin

6月に熱中症多発

2022年07月07日 09時00分

 大正期に活躍した医学者、推理作家の小酒井不木は短編小説『死の接吻』(1926年)の冒頭で、ある夏の東京のひどい暑さについてこう触れていた

 ▼「その年の暑さは格別であった。ある者は六十年来の暑さだといい、ある者は六百年来の暑さだと言った」。当時の中央気象台の観測で、最高気温は華氏120度だったと記している。摂氏に換算すると48・9度にもなるため、さすがにそこまでのことはあるまい。とはいえ「熱射病に罹って死ぬものが日に三十人を越した」というのだから、それまで経験したことない暑さではあったのだろう。倒れた人も相当な数に上ったはず。熱中症の恐ろしさは今も昔も変わらない

 ▼経験がないといえば、ことしの早過ぎる暑さも同様である。総務省消防庁の発表によると、6月に熱中症で病院に搬送された人は全国で1万5657人、死者17人に上り、統計を取り始めた2010年以来最も多くなったそうだ。これまでの最高が11年の6980人だから、倍以上である。近年は「ゲリラ豪雨」への注意が呼び掛けられているが、いよいよ「ゲリラ熱射」の心配までしなければならないらしい。昔なら数年か数十年に一度だった異常気象が毎年のように出現する。しかも人々が予測もしていない時期に突然襲ってきたりするからたちが悪い

 ▼これも地球温暖化の影響だろうか。本道も蒸し暑い日が続く。しばらくは日本中で熱中症への警戒が必要なようだ。梅雨明けの早さも異例だったが、以降、各地で大雨やひょう、雷による被害も相次ぐ。身を守る行動をぜひとも。


期日前投票好調

2022年07月06日 09時00分

 参議院選の投票日当日に用事が入りそうなため、先の日曜日に札幌市の最寄り区役所で期日前投票をしてきた。気温が30度を超える一日で一番暑い昼の時間帯だったが、訪れる人は引きも切らず。なかなかの盛況である

 ▼投票を済ませて会場を出ると、今や恒例となった報道各社の出口調査が大挙待ち構えていた。隙を見せると調査員が次々と目の前に立つ。きりがないので数社に答え、調査票を縫うように外へ出た。盛況との印象は間違いではなかったようで、全国でも期日前投票は好調らしい。総務省が都道府県の選挙管理委員会を通して期日前投票の状況を調べたところ、前回3年前の同時期と比べ20%以上も増えていたそうだ。3日までに全有権者の7.39%に当たる778万6881人が投票を済ませているという

 ▼今回に限って10日の投票日に用事のある人が大勢出現したわけではあるまい。投票日を期限として、それまでの行けるときに行っておけばいいと幅を持たせて考える人が増えたのでないか。毎日新聞出版の『平成川柳傑作選』にこんな一句を見つけた。「落としたい人を書くなら率上がる」広沢澄風。中には最近の物価高騰に腹を立て、一日も早く抗議の一票を投じたかった人もいたろう。理由はどうあれ当日面倒になって行かないよりずっといい

 ▼ただ、過去の傾向を見ると期日前投票が好調でも最終投票率は低いことが少なくない。あまり関係がないのである。日本が正念場を迎えている今、一票の価値はいつにも増して重い。最終投票率も上げて民意を政治に突きつけたいものだ。


KDDIの通信障害

2022年07月05日 09時00分

 ことし2月、札幌圏に降った大雪の影響で、JR北海道の札幌発着列車が約1週間にわたり運休した。異例の事態といっていい。会社や学校へ通うのに、何で行けばいいか頭を悩ませた人も多かったろう。特定の地域に降った雪により、ほぼ道内全域で利用者の日常の足が奪われたのである

 ▼広域にネットワークを張り巡らせ、分刻みで効率的に列車を運行させている鉄道の思わぬ弱さが明らかになった出来事だった。米国のサブプライムローン問題が端緒になった2008年の世界金融危機もそうだったが、ネットワークでつながれているゆえにシステム全体が思わぬ脆弱(ぜいじゃく)性を抱えることもある。2日に全国で発生した携帯電話の通話やデータ通信が利用しにくくなるKDDIの障害もその類いだろう

 ▼ネットワークの保守管理のため機器を交換していたところ、操作の過程でその設備にアクセスが集中。データが渋滞する「輻輳(ふくそう)」が起き、システム全体がダウンしてしまったらしい。きのうの夕方頃まで全面復旧には至らず、月曜日とあって回線を利用している官庁や会社などは連絡調整に追われたようだ。消防や警察への通報にも少なからぬ影響があったと聞く。今や通信はあって当たり前のインフラなだけに突然使えなくなると生命や財産を左右する危機的状況に発展しかねない

 ▼災害級の大雪も予期せぬデータの輻輳もそうだが、どんな分野でも想定外のことは必ず起こる。ただ、事前に対策を取るのは難しい。便利さの陰に潜む落とし穴である。利用者としても心したい。


底辺の仕事?

2022年07月04日 09時00分

 この歌を聴いているといつも胸を揺さぶられる思いがする。迫力のある声に情景が浮かぶ歌詞。つい引き込まれてしまう。美輪明宏さんが作詞作曲し、自ら歌う『ヨイトマケの唄』(1965年)である

 ▼「子供の頃に 小学校で ヨイトマケの子供 きたない子供と いじめぬかれて はやされて くやし涙に くれながら 泣いて帰った 道すがら 母ちゃんの働く とこを見た 母ちゃんの働く とこを見た」。少年は慰めてもらおうと土方をしている母親の所へ急ぐが、汗と泥にまみれて必死に働く母親の姿を遠目に見て、自分も負けるものかと学校に戻る。後にエンジニアとなったかつての少年は工事現場で当時を振り返るのだ。「どんなきれいな 唄よりも どんなきれいな 声よりも 僕をはげまし 慰めた 母ちゃんの唄こそ 世界一」

 ▼少年は母親の仕事を恥じていただろうか。本人に尋ねることはできないが、決してそんなことはなかったろう。むしろ感謝し誇りにさえ感じていたに違いない。就職活動を支援する人気サイト〈就活の教科書〉が「底辺の仕事ランキング」を発表し、その筆頭に土木・建設作業員を置いたと聞き先の歌を思い出した。肉体労働で、誰でもできるのが特徴という

 ▼この記事を書いた者は誰が自分のいる街やインフラ、建物を作っているか知らないとみえる。汗と泥にまみれて懸命に働く方々を底辺と見るサイトにまともなアドバイスができるのか。批判を受けて記事は削除したようだが、働くことを甘く見てもらっては困る。底辺ではない。縁の下の力持ちだ。


情報災害

2022年07月01日 09時00分

 東日本大震災時の福島第1原子力発電所事故では放射線による直接の健康被害は出なかったものの、間違った情報や根拠のないうわさに多くの人が苦しめられた。そんな風評被害は事故から11年が過ぎても解消されていない

 ▼福島県出身で現在もこの地に暮らすジャーナリスト、林智裕さんが近著『「正しさ」の商人 情報災害を広める風評加害者は誰か』(徳間書店)で、被害の実態と問題点を詳細に分析していた。林さんは福島に関するこんなデマや流言飛語も記録している。農家に対しての「サリンを製造したオウム信者と同じ」、結婚前の女性を意図した「結婚をして子どもを産むとですね、奇形発生率がドーンと上がることになって」。事実に反する上、発信者は学者やマスコミ、市民団体といった影響力を持つ人のことも多いという

 ▼注目を集めたい、視聴率を上げたい、勢力を拡大したい―。思惑は違えど、人々の安心な未来のためにと「正しさ」の仮面をかぶって風評を流すところは共通している。結局、風評は地道な努力によって跳ね返していくしかないのかも。そう思わされる明るい話題がきのう、おとといと続いた。一つは英国の福島県産食品などに対する輸入規制の撤廃、もう一つが帰還困難区域だった大熊町の避難指示解除である

 ▼福島では放射線による健康被害はないとの科学的事実に、現実が追い付いた格好だろう。ただ、時間はかかりすぎた。林さんはこう指摘する。情報災害は「社会を機能不全に陥らせ少なからぬ人々を殺め」る。その被害は時に元となった災害より大きい。


ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • 川崎建設
  • 古垣建設
  • web企画

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (3,095)
BP新駅で大規模開発 高層MS、商業施設、ホテルな...
2022年06月29日 (3,030)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (2,155)
おとなの養生訓 第126回「なぜ吐くのか」 空腹時...
2017年12月22日 (1,740)
おとなの養生訓 第44回「肥満と発汗」 皮下脂肪が...
2014年04月25日 (1,552)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 激化する若者獲得競争
地方企業が取るべき
戦略は-new

激化する若者獲得競争 地方企業が取るべき戦略は-
若者獲得に向けた工夫とは。釧路市内の団体が開いたセミナーから、各回の講演概要を紹介する。

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第234回「アセトアルデヒド」。二日酔いの原因物質で、顔の赤みや動悸、胃腸への刺激を引き起こします。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第21回「住宅の内装/色と素材感」。質感や柄から受ける印象も大切にしてコーディネートを進めたいものです。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第20回「能力向上へ適切な指導」正しいゴールの設定やフィードバック、成功体験が大切です。