コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin

原発運転期間60年超

2022年12月01日 09時00分

 日本は失敗を許さない社会だとよくいわれる。武士道精神からくる恥の意識からか、単一に近い民族特有の同調圧力からか、確かな理由は分からない。たぶん幾つかの要因が合わさったものなのだろう

 ▼完璧を目指すのは悪いことではないが、失敗を許さない雰囲気が逆に失敗を招いたりする。経験のある人も多いに違いない。畑村洋太郎東大名誉教授も、著書『失敗学の法則』(文春文庫)でこんな指摘をしていた。「日本人は自分たちが起こした失敗から目を背け続け、失敗を真っ正面から受け止めることをしてこなかった」。日本が行き詰まる根本の原因はそこにあるというのである。原子力産業もやはり例外でなく、当初からこの「失敗を許さない病」に侵されてきた

 ▼原子力発電所を巡り、国民は「絶対に事故や故障があってはならぬ」と断じ、発電事業者は「100%安全」と胸を張ってきたのである。結果はご存じの通り。人々は事故や故障に過剰反応を示し、発電事業者は事実を隠すようになった。これでは健全な発展は望むべくもない。放射性物質を扱う事業が高い安全性を求められるのは当たり前。ただ、事故や故障が全く起こらないわけはない。肝心なのは失敗を前提としたリスク管理と情報公開、確実な改善である

 ▼経済産業省が先日、最長60年の原発運転期間から、審査などによる停止期間を除外する行動計画案を示した。エネルギー資源のない日本は、いましばらく原発を賢く利用していく必要があろう。失敗から目を背けるのでなく、失敗から学ぶ姿勢で長期利用に道を開きたい。


冬本番

2022年11月30日 09時00分

 子どものキツネが、優しい人間の帽子屋さんに毛糸の手袋を売ってもらう。新美南吉の『手ぶくろを買いに』である。誰もが知る童話の名作だろう。なぜ急に手袋が入り用になったのか。「寒い冬が北方から、きつねの親子のすんでいる森へも」やってきたからだった

 ▼物語の幕を開ける子どもキツネの慌てた言葉が印象深い。こう言ったのである。「母ちゃん、目に何かささった。抜いてちょうだい。早く、早く」。お母さんキツネがびっくりして確かめたが目に異常はない。実は夜に降った雪で外が一面銀世界となり、お日様を反射した光が洞穴から出た子どもキツネの目を射貫いたのだ。一夜にして季節が冬に変わる。雪こそないものの、ちょうど今日のような日のことだったろう

 ▼きのうの暖かさがまるでうそのような、きょうの本道の冷え込み具合である。きのうの最高気温は札幌で14度、稚内でも12度だったのに、きょうの予想は札幌で2度、稚内でマイナス2度だという。広い範囲で雪も降るようだ。「あたたかき十一月もすみにけり」中村草田男。残念ながらそういうこと。天気予報によると寒冷前線が通過した後に大陸から真冬並みの寒気が入り込み、あしたからさらに気温が下がるらしい。12月に入ると同時に冬本番というわけである

 ▼年末に向け公私ともに忙しい時期だ。仕事の追い込みだ買い出しだと席を温めるいとまもない人は多かろう。ここで体調を崩してはいられない。寒さに負けぬようきょうからはしっかりと着込んで出掛けたい。子どもキツネに倣って暖かい手袋も忘れずに。


替え玉受験

2022年11月29日 09時00分

 今は人と人とがウェブで気軽につながる、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)全盛の時代である。現実世界では関係を持てないような相手ともやり取りできるのが人気の要因だろう

 ▼ただSNSは匿名が多いため新たな現象も生まれた。別の人格を演じる人が増えたのである。中でも目立つのは若い女性のふりをする男性でないか。名前やアイコンはもとより、言葉遣いもすっかり女性になっている。若くてかわいい女性だと思っていたら、実際はむさくるしいおじさんだったりするわけだ。変身願望ももちろんあろうが、本当の自分にこれといった特徴がないときには、魅力的なキャラクターを使った方が注目を集めやすい。SNSではもはや当たり前の光景である

 ▼そんな「当たり前」が罪悪感を薄めている部分があるのかもしれない。就職希望者が自宅などから受けられる企業のオンライン採用試験で替え玉受験が相次いでいるという。ウェブにはなりすましを請け負う人物も多いのだとか。大阪市の会社員の男が先週、東京都内の女子大生から依頼を受け、不正に代行受験したとして警視庁に逮捕された。容疑は私電磁的記録不正作出。男は10万円を受け取り、23社の受験を代行していた

 ▼驚いたことに男はこれまで300人の代行をしたと供述しているそうだ。企業としては「疑えば皆怪しげな人ばかり」さいたま(『平成川柳傑作選』毎日新聞出版)といった心境でないか。不心得な就職希望者は、できるキャラクターにやってもらっただけと軽い気持ちだろうが、現実の罪は重い。


ウクライナに冬

2022年11月28日 09時00分

 冬の屋外で不測の事態が発生すると、往々にして命の危険にさらされる。道産子なら身に染みて感じていることだろう。鍵を持たずに薄着で外へ出て、たまたまドアがロックされてしまったときの焦りといったらない。車を運転していて吹雪で立ち往生を余儀なくされたときも言い知れぬ不安にかられる

 ▼それだけに、千島海溝と日本海溝で巨大地震が起こった場合の被害想定には、恐怖を実感した人も多かったろう。冬の深夜の想定だと、死亡リスクの高まる「低体温症要対処者」が千島海溝モデルで約1万5000人、日本海溝モデルで約6万6000人に上ると推計している。この被害想定を思い出したのは、ロシアの侵略に苦しむウクライナの現状に触れたからである。災難は地震や津波ばかりではない

 ▼ロイターによると24日現在、度重なるロシア軍の空襲で首都キーウの住民約290万人の6割が電力供給を受けられない状況に陥っているそうだ。冬に入り、氷点下の日が続いているというのにである。ロシア軍がミサイルで、原子力発電所などエネルギーインフラを狙い撃ちしているのだ。深刻な燃料不足に無情な追い打ちをかける電力破壊テロ。暖をとる手段を奪われたウクライナの方々は今、どれだけ心細い思いをしていることか

 ▼多くの民間人の命を危険にさらすロシアの行為は卑劣というほかない。ウクライナではこれからの冬本番に備え、水や食料、防寒具の準備を急いでいると聞く。事態は一刻を争う。われわれがすぐにできるのは募金をすることくらいか。支援のHPを確認したい。


自賠責保険値上げ

2022年11月25日 09時00分

 日本の昔話に出てくる道具で、たいていの人が知っている物といえば「打ち出の小づち」も必ず名前が挙がる一つだろう。欲しい物や願い事を唱えながら振ると、それが現れたりかなったりする

 ▼最も有名なのは「一寸法師」の話で語られた小づちでないか。仕えていた京の大臣の娘が鬼に襲われた際、警護に就いていた一寸法師が鬼の体の中に入って大暴れ。慌てて逃げ出した鬼がうっかり落としていったのだった。この小づちを振って一寸法師は背を伸ばし、娘と結婚。金銀財宝も打ち出し、「末永く幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし」というわけである。自分の前にも一つ落ちてこないものか。かなわぬ夢だが、どうやら政府はこれを持っているつもりでいるらしい

 ▼全ての自動車に加入の義務がある自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)を、来年度から値上げすることにしたそうだ。交通事故の被害者支援に、一層の力を入れるためだという。積立金や運用益では賄いきれなくなったのだとか。意義ある施策で値上げも最大150円程度。悪い話ではない。と思いきや、話には裏があった。財務省が過去に借り入れた保険の運用益約6000億円をいまだ返済していないのである。鈴木財務相が先日、事実を認め謝罪した

 ▼保険の積立金などは本来8000億円ほどあるが、その75%が消えたのだから苦しいのも当たり前。そこで政府は強制保険を打ち出の小づちに変え、穴埋めしようと考えたのだ。昔話ではよこしまな者が振ると良くないものが出る。まず国民の怒りと不信が飛び出よう。


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