保育園での子どもの声は騒音で迷惑―と、近隣住民が問題視する例が増えているらしい。以前報道番組で見たのだが、「うるさい、何とかしろ」と突然怒鳴り込んでくる高齢者もいるのだとか
▼にわかには信じ難いが、どうやらほんの一部の偏屈な人が文句を付けているわけでもなさそうだ。古くからある園が住民から退去を迫られる、反対運動が起こって新設計画が暗礁に。そんなことが各地で相次いでいるという。そんなことを思い出したのも、テレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」が6日伝えたドイツの保育園事情を見たからである。それによるとドイツでは、広場や保育園での子どもの声は騒音でない、と法律に定められているとのこと
▼このため住民ともめることも、建設を巡り反対運動が起こることもないそうだ。さすがに合理性を尊ぶ国は違うと感心していたら、実はドイツもかつては今の日本と同じ問題を抱えていたと聞き驚いた。その事態を打開するために法律が整備されたのだという。ただ法律をつくるとなるとハードルが高い。ではどうするか。騒音問題と真正面から向き合った長野県松本深志高校の取り組みが参考になるかもしれない
▼一女生徒の発案で、近隣住民と生徒、学校が誠実に話し合い結論を出す場「鼎談深志」を立ち上げたのである。この経過をまとめたドキュメントは、ことしのNHK杯全国高校放送コンテストで優勝したそうだ。大切なことはそれぞれが分かり合おうとする努力を惜しまないこと。騒音問題が逆に寛容な地域づくりに姿を変えた好例だろう。