本道ではきのう、吹き荒れる風と雨にひどい目に遭わされたという人が少なくなかったろう。傘を壊されたり、さすのを諦めたりでずぶ濡れになって歩いている気の毒な人を随分見掛けた
▼建物に入る直前だったため被害は小さかったものの、当方も強風に一瞬の隙を突かれて傘の骨を折られた一人である。「風が吹けば…」のことわざのようには今どきおけ屋がもうかるはずもないが、傘はかなり売れたに違いない。「知床の山容奪ふしまきかな」戸川幸夫。風の種類の一つに「風巻(しまき)」がある。ときに雨や雪を含んで激しく吹きすさぶ風のことをいうらしい。「し」は古語で風を意味するそう。きのうの風はまさしくそれでなかったか
▼風巻を連れてきたのは、迷惑も甚だしい季節外れの台風22号が形を変えた温帯低気圧。本州各地に大雨を降らせ内水氾濫など災害を引き起こした揚げ句、さらに勢力を強めて本道にやってきたのである。しかも強い冬型の気圧配置を構成したため凍えるほど寒かった。道内では28日に開通した日勝をはじめ狩勝や石北、三国といった十勝と道北の主要な峠で雪が積もった。平地でも雪がちらついた地域が何カ所かある。冬に臨む覚悟を固めよということだろう
▼「秋惜しむ雪吊りの縄売り出され」小林春鴎。そんなのんびりした風情はどこへやら、このすさまじい風雨で秋を惜しむ気分も街路樹の葉っぱともどもどこかへ吹き飛ばされてしまったようだ。きょうで10月も最後。これを過ぎればことしもあと2カ月である。さて、やり残したことはありませんか。