縁日と聞くといまだに心がはやるという人も少なくないだろう。普段目にできないものがずらりと並び宝物を探すような気持ちになる。祭りのときに開かれるため一年に何度もあるものではないが、楽しみたいなら別の手もある
▼常設の仲見世にこちらから出掛けて行けばいい。浅草仲見世がその代表格となろう。筆者も一度訪れたことがあるが大変なにぎわいで、一軒一軒のぞいて歩くだけで祭り気分を満喫できた。「浅草の夜のにぎはひにまぎれ入りまぎれ出で来しさびしき心」石川啄木。20代前半に浅草かいわいで遊んでいた啄木にとっても、仲見世はなじみの場所だったのでないか。その浅草仲見世商店街が今、家賃騒動で揺れに揺れている
▼来年1月から家賃を現行の約16倍に値上げしたいと浅草寺から提示されたという。商店街には現在89の店があり、広さ10―20m²の小口店がほとんど。この10m²当たり月1万5千円の家賃を25万円に上げるとのこと。風神雷神もびっくりしているに違いない。ことし7月に東京都から建物の所有権を買い取った浅草寺が、周辺の家賃相場に合わせようとしているのだとか。これまでが破格の安さだったのだ
▼16倍となれば廃業する店も出よう。新陳代謝も必要だが金太郎あめ化した全国の街を思うと心配である。そこにしかない店、活気ある全体のたたずまいがいかに大切か。目先の利にとらわれて金の玉子を生むガチョウを殺してしまう童話もあった。下手をすれば東京観光に大きな傷を付けかねない。せっかくの宝物である。円満に解決してほしい。