関東以南の人が抱く北の地方の印象は、以前なら「寒い」「寂しい」「遠い」が上位を占めていたのではないか。そんな心情が昭和歌謡には色濃く表れていた
▼ご存じの歌ばかりとは思うが、幾つか例を挙げてみよう。まず北島三郎の『函館の女』は「はるばるきたぜ函館へ」、石川さゆりの『津軽海峡冬景色』は「北へ帰る人の群れは誰も無口で」、高倉健の『網走番外地』は「燃えるこの身は北の果て」、と歌う。当地に暮らす道産子としてはどうかと思う歌詞ばかりだが、印象ゆえ致し方ない。ただ、最近はそれも変わってきたようだ。プロ野球で全国に引けを取らない北海道日本ハムファイターズの活躍も、イメージアップに随分と貢献している
▼それを裏付けるものだろう。漢字一文字で世相を象徴する恒例の「今年の漢字」が「北」に決まったと、おととい発表になった。大谷翔平選手の大リーグ移籍や早実の清宮幸太郎選手の入団で日ハムが注目されたことが、ことしは多く理由に挙げられたらしい。ところで残念なのはそんな明るさあふれる理由だけではないことだ。ミサイル発射だ核実験だと、「北」朝鮮に振り回された一年だったことも「北」の漢字を人々の意識に上らせた原因のよう
▼しかもこの師走の慌ただしい時期に、木造船で漂着した北朝鮮の船員が本道の松前小島で窃盗事件まで起こした。これも強まる国際社会の経済制裁や、金正恩委員長の軍事優先による民衆の苦境と無関係ではないのだろう。だからといって、はるばる「北」海道にまで荒稼ぎに来てもらっては困るのだが。