北海道 土木と文明の150年

2018年01月01日 07時00分

 ほとんどの人が普段忘れているのではないか。暮らしがインフラ(社会基盤)によって支えられている事実をである。当たり前すぎて意識には上らない。ただとても大切なことである

 ▼海岸・港湾工学の権威合田良實氏が『土木と文明』(鹿島出版会)に記していた。「旧石器人は100万年近く前に共同作業で石垣を築きました。―土木事業の成功なしに各時代、各文明の発展がなかったことは間違いありません」。100万年を考えるまでもない。1869年に本道が「北海道」と命名されてことしで150年。その年月もまた、土木が文明をけん引する歴史だった。1年の半分は雪と氷に覆われる大地で今快適に生活できるのも、先人たちがインフラを積み上げてきたおかげなのである

 ▼道なき所に道を造り、橋を渡し、線路を敷いた。森と闘い、畑を開き、町を興した。函館と札幌を結ぶ札幌本道(現国道5号、36号)が73(明治6)年には開通していたと聞くと、開拓者の熱意にあらためて胸を打たれる。国木田独歩が95(明治28)年に来道した際の印象を「空知川の岸辺」にこう書き留めていた。「野にも山にも恐ろしき自然の力あふれ、此処に愛なく情なく、見るとして荒涼、寂寞、冷厳にして且つ壮大なる光景は恰も人間の無力と儚さとを冷笑ふが如く」

 ▼独歩がインフラの充実した今の本道を見て何と言うか想像すると楽しい。ところで150年も単なる一つの区切り。ここで立ち止まっては発展も望めまい。少々大げさだが本道の文明を進めるには新たなインフラがいる。考える年にしたい。


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