おとといからきのうにかけての深夜、消防車のサイレン音に不安を感じた札幌市民は多かったろう。西区に住む筆者も0時半頃から鳴り始めたその音を聞いていた。すぐに消防出動情報につないでみると、東区北17東1で火災発生とのこと
▼距離が離れている割には随分とサイレンがけたたましく響く。少し気にはなったものの、規模の大きな火災のためこちらの区からも応援が出たのかもしれぬと考えつつ就寝した。その時、何が起こっていたか。朝のテレビニュースがトップで伝えているのを見て分かった。生活困窮者のための自立支援施設「そしあるハイム」の内部が全焼し、入居者16人のうち男女合わせて11人が亡くなったのである
▼施設は支援事業所が借りていた木造3階、延べ約400m²の元旅館だそうだ。頼る人もないまま身を寄せ合うように暮らしていた入居者を突如襲った不幸。深夜でもあり、高齢者も多かったため容易には逃げられなかったのだろう。実に痛ましい出来事というほかない。昨年10月に施行された「住宅セーフティネット法」改正法により、民間賃貸住宅、空き家を高齢者や低所得者らのために利用する動きがこれから本格化する。今回の元旅館のように使われなくなった建物を福祉関連施設として転用する事業も近年増えてきた
▼既存ストック活用や生活困窮者の支援、防犯のためには有効な手法に違いない。ただ、取り組みを急ぐあまり防災がおざなりになるのでは困る。適切な施設管理と利用者の意識啓発、手間も費用もかかることだがそれだけは徹底してほしい。