▼世界地図を眺めるというのもなかなか楽しいものだ。何を大げさなと言われそうだが、宇宙飛行士と同様の視点から地球を見下ろせるものなど地図をおいてそうはない。日本が極東の島国と呼ばれるのが昔から疑問だったが、地図はその答えも教えてくれた。ある時、欧州で使われている世界地図を見たのだが日本は中央でなく、地図から落ちそうなほど右の端に載っていたのだ。なるほど東の果てである。
▼今はインターネットに地図サービスがあるため、さらに便利になっている。その筆頭が「Googleマップ」だ。行きたい地点に文字通り一瞬で移動できる上、かつてなら定規で測っていた2点間の距離も数クリックで表示される。知りたいことがすぐに分かる醍醐味(だいごみ)は紙以上だろう。早速、豊渓里という地名を同マップで検索してみた。北朝鮮が6日、水素爆弾実験を強行した場所である。地図画像は待つこともなく出てきたが、こればかりは楽しめる気分ではない。
▼その核実験場は北朝鮮北東部に位置する。地図で見る限り深い山の中だ。北緯は41度で函館とほぼ同じ。距離は函館まで直線で約950kmである。函館からなら大阪に行くくらいの距離だ。海を挟んではいるが思った以上に近い。地理的にはすぐ隣ではないか。今回のことは国際社会に対する卑劣な挑戦だ。金正恩第1書記の持つ地図では北朝鮮が世界の半分以上を覆っているのかもしれないが、そろそろ世界標準の地図を使った方がいい。夢ばかり見ていると孤立では済まなくなる。