日頃強く疑問に感じていることがある。説明を聞いても全く理解できない。それは米国の銃規制が遅々として進まない事実である
▼先週もフロリダ州のマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校で元生徒による銃乱射事件が起き、17人が犠牲になった。実にむごい。にもかかわらず銃規制を訴えたのは事件があった州の生徒たちを中心とする一部の人々だけで、全米を巻き込む大きなうねりにはならなかったようだ。「自分の身は自分で守るという米国の開拓者精神を示すもの」「危険な現代社会で自分と家族の身の安全を確保するための正当な権利」。銃の所持についてはそんな説明をよく聞く。ただ現に銃なしで安全な社会を築いている日本人からすると、その言葉はどこか空々しい
▼トランプ大統領は今回の事件を受け、犠牲者を悼むとともに教職員を銃で武装させる案の検討を約束したという。規制は端から眼中にないらしい。もっとも銃規制自体、歴代大統領誰一人として実現できなかった難題である。かなり鈍いようにも思える米国民の反応が気になり、試みに一つの計算をしてみた。報道によると米国の銃による死者数は1年間で1万1000人(2016年)。人口で割るとおよそ10万人に3・4人となる。これは日本の交通事故死者数3694人(17年)の2・9人とさほど変わらない
▼つまり個人の日常経験としては、どちらもめったにない出来事なのである。身近でない話に真剣になれないのはいずこも同じ。最大の敵は銃規制反対派でもトランプ氏でもなく、無関心なのかもしれない。