生物進化の不思議を独自の切り口で紹介する児童書『ざんねんないきもの事典』(高橋書店)が2月20日の増刷で100万部を突破したと知り、にわかに興味がわいた
▼この出版不況に児童書のミリオンセラーは極めて異例である。早速読むと実に面白い。題名の「ざんねん」は、見た目と違ったり、イメージを裏切られたりといった意外な一面を表す。ページを繰るたび、思わず「へー」と感嘆せずにはいられない。内容を少し紹介すると例えばこんな風である。ホッキョクグマといえば真っ白な毛をなびかせて氷原を走る姿がすぐ頭に浮かぶ。ところが「毛をそったらクロクマになるよ」。肌は黒いのだそうである。太陽の熱を効率よく吸収するためらしい
▼もう一つ挙げよう。体長6m、重さ1㌧にもなる巨大なイリエワニ。かむと小型トラックほどの力をかけられるが「口を開く力はおじいちゃんの握力に負ける」。開く力は30㌔しかないため片手で押さえ込めるのだという。なるほど「ざんねん」である。さて「ざんねん」といえば人間だって相当なもの。この時期よくある風景を借り、その生態を描写してみたい。職場に新人が配属された。見るからに快活で優秀な若者である。早速上司が指導を始めたが、程なくこう思い始める。「返事だけはいいが動きが遅い。十言ってやっと二分かる。残念なのが来たな」
▼一方の新人はこう。「人の話を聞かない上に説明も下手。残念な上司に当たってしまった…」。人間の「ざんねん」をまとめようとすると百科事典ほどになろう。きっと全く売れないが。