▼いきものがかり、という3人組ポップスグループの曲に「ありがとう」がある。新聞故ここでお聞かせするわけにいかないが、歌い出しはこうだ。「ありがとうって伝えたくて あなたを見つめるけど」。歌い手の女性の伸びやかな声が耳に心地良い。言うべき場面ですっと口から出ないのが、ありがとうの言葉だろう。苦労を掛けた妻に、ありがとうと言った覚えがない、なんてご仁もいるのではないか。
▼きょうは「ありがとうの日」である。3月9日、39(サンキュー)の語呂合わせだ。ご存じとは思うが、「ありがとう」は「有り難し」が転じて、めったにない親切や好意に感謝を表す言葉になったもの。心からの気持ちを、口に出して相手に伝えることができれば、人間関係は随分円滑になる。誰しも経験することだろう。そう考えると現政権は、沖縄への感謝に少し欠ける部分があったかもしれない。基地問題で既定路線にこだわるあまり、県民感情を逆なでする結果を招いた。
▼民主党にも責任がある。鳩山由紀夫首相(当時)は県外に移すとぶち上げ、すぐ撤回するドタバタ劇を演じ混乱を深めた。感謝でなく歓心が狙いだったと批判されても仕方ない。国は今回、米軍普天間飛行場の辺野古移設をめぐる訴訟で福岡高裁那覇支部の和解案を受け入れた。再び交渉に入る。「ありがとう」の歌は続く。「あなたの夢がいつからか ふたりの夢に変わっていた」。甘ったるい意見と分かっているが、国と沖縄が感謝し合うことで解決の糸口が見えてきはしないか。