▼あなたが幸福を感じるのはどんなときですかと問われて、おいしい物を食べているときという人もいれば、家族と共に過ごしているときと答える人もいよう。アンパンマンの作者やなせたかしは『人生、90歳からおもしろい!』(新潮文庫)に、大手術を切り抜けた後、再び朝から晩まで仕事をしている自分に気付き、「これがつまり幸福な人生だ」と記している。幸福をどう捉えるかは人それぞれだろう。
▼これが国別の幸福度となると、人それぞれだから、で済ますわけにいかない。国連が毎年まとめている世界幸福度ランキングは、1人当たり国民総生産や健康寿命、社会的支援、自由、寛容さなどを指標にしているそうだ。その2016年版が先週発表になった。それによると、対象157カ国中、1位がデンマーク、2位がスイス、3位がアイスランドと、上位5位までを欧州勢が占めた。日本は53位。ちなみにご近所の国はといえば台湾35位、韓国58位、中国83位といったところ。
▼日本の順位が低いことに、驚く人もいるに違いない。経済的には決して豊かでないグアテマラが39位、ウズベキスタンが49位と聞けばなおさらである。実はこれ、日本人が傾向として、毎日を幸福と感じて暮らしていないことに原因があるらしい。経済指標は高くとも、彼の国の人ほど人生を満喫するには至っていないということ。国民性もあろう。ただ、最近の日本は、政治、経済、社会、どこを見てもぎすぎすしていて、幸福の方も居場所を見つけるのに難儀しているのでないか。