▼NHKの連続テレビ小説「あさが来た」をいつも見ている。感心させられるのは主人公あさの先見の明だ。石炭需要が高まる前に炭鉱を買い、金融が広がると見ると両替商から銀行にくら替え。さらには、大阪を恐慌が襲うと聞けば炭鉱を売って銀行の資本を増強し、保険会社の合併を進める。どこまで史実に則っているのかは分からないが、実在した人物がモデルだから、作り話ばかりでもないのだろう。
▼時局を読み、先手を打っていく。難しい事とはいえ、会社経営はもちろんのこと、政治や経済の分野でも大切なことである。2016年度予算が29日、成立した。安倍首相は同日開いた記者会見で、予算を前倒しして執行する考えを表明したそうだ。ドラマの中のあさではないが、日本経済が停滞から不況へ転落する前に、先手を打とうということだろう。中国や欧州をはじめとする世界経済低迷の日本への影響を緩和するためにも、機動的な財政運営で体力を強くしていくしかない。
▼きょうで15年度は終わりだが、新年度の早い時期からきめ細かな公共事業の発注が始まるのなら、建設産業界にとっても朗報だ。特に本道にとって春先から人と資機材の手当てができるのは経営の安定につながる。安倍首相は会見で、伊勢志摩サミットまでに世界経済の成長に貢献するための追加経済対策も議論していくと語っていた。手をこまねいていたら泥沼にはまりかねない。こんなとき、実在したあさ―広岡浅子ならどんな判断を下したろう。ちょっと聞いてみたい気もする。