▼道産子であれば昔から耳になじんでいて、少し聞いただけですぐにそれが何か分かってしまうフレーズがある。例えば「お、ねだん以上」ニトリ、「一番そばに」ツルハ、「おはようとともに」道新スポーツ、という具合。つい口ずさんでしまう人もいよう。商品名を前面に出す形もあり、「出てきた出てきた山親父」の千秋庵、「三方六の柳月」など挙げればきりがない。耳慣れは身近さの証明でもある。
▼いずれも会社や商品を消費者に強く印象付けるものだろう。ニトリなら納得できる品質の良さを、ツルハなら生活に寄り添う姿勢を、道新スポーツなら情報が朝早く手元に届くことを、それぞれその言葉に乗せて伝えている。本来の目的とは方向が別なのだが、共通のご当地CMの記憶を持つ道産子同士、妙な仲間意識を覚えるのも一つの効果といえようか。そんなことを思い出したのも今月初め、北海道の新たなキャッチフレーズ「その先の、道へ。北海道」が決まったからである。
▼ある言葉が会社の顔になるのと同様、「その先の」は今後の北海道を体現するものになるのだろう。従来の「試される大地 北海道」は拓銀破綻の翌年1998年にできたからか、試練に立たされる北海道、との受け止め方も多かったように思う。そういう意味では当時を的確に捉えていたのかも。ともあれ北海道新幹線とともに走り出したこともあって、新たなフレーズからは、未来に向け可能性が開かれていく勢いを感じた。もちろん、それが「試される」のはこれからなのだが。