北海道新幹線の札幌駅ホーム位置を巡り、現駅の在来線東側にホームを新設する東案その2(大東案)が地元経済界の了承を得たことで、2年半余り続いた議論が今月末に決着を迎える。経済界からは乗り換えの利便性に課題を指摘しつつも、急増する観光客の対応や将来の拡張余地を考慮し理解を示した。北海道の将来を担う玄関口を決める議論は今後、駅前再開発との連動や、全道を結ぶ交通ネットワークとの連携に焦点が移る。(関連記事4面に)
17日、道と札幌市が市内で開いた経済界との懇談には、岩田圭剛北海道商工会議所連合会会頭、横内龍三北海道経済同友会代表幹事、堰八義博北海道観光振興機構会長、瀬尾英生北海道経済連合会専務理事が出席した。
絞り込まれた現駅認可案と大東案、それぞれの一長一短を認めた上で、北海道の玄関口の在り方について意見を述べた。
岩田会頭は「全道を結ぶ交通機関とシームレス(継ぎ目のない)な駅であることが重要」と強調。他の出席者からも開業効果を全道に波及させるべく、全道を結ぶ交通ネットワークとの連携を求める声が相次ぎ、大東案の課題として約300m離れる在来線とのアクセス性に注文が付いた。
しかし横内代表幹事は「将来の観光客増加を見込むと余裕を確保する視点が必要」と容認の発言。急増が予想される観光客の混雑緩和、将来の拡張余地を残すことの重要性を認める声が大勢を占め、検討要素を残しつつも大筋で賛成した。
鉄道運輸機構やJR北海道、国土交通省を含む5者は、これにより月末に大東案を正式決定する。ただ、実現にはJR北海道が現駅案との差額75億円を負担することが前提。
地方の路線存続が議論される厳しい経営状況の中「地方には、投資を路線存続に使ってほしいという声もある」(岩田会頭)との指摘も上がった。
JR北海道の島田修社長は、観光客の増加基調が続く見方を示し「苦渋の決断だが、在来線を含め対応できる拡張余地を残したい」とし、大東案が将来の経営改善と収益拡大につながるとして理解を求めた。
堰八会長は「駅前再開発で西1丁目の土地を魅力あるエリアにしてほしい」とするなど、ホーム位置が決まらずに停滞した、駅前のまちづくり議論が前進することへの期待も膨らむ。
札幌市は開業に合わせた機能強化を目指し、駅前の北5西1、西2街区にバスターミナルの建て替えやランドマークビルを誘導する再開発で周辺の再整備を先導する構想を描く。
ホームが東寄りになり市道や市有地の一部を使う必要があるため、秋元克広市長は「若干の見直しが必要」と交通への影響や土地利用で課題整理を進める意向だ。
島田JR北海道社長も収益増加策の一つに開発関連事業を挙げ「札幌駅は重要拠点。(大東案は)東側の開発を取り込める」と意欲を見せる。
駅は、それ単体ではなく利用者が行き交う周辺のまちづくりとの関係性が、魅力や利便性を大きく左右する。今後は玄関口として本道の将来を担う周辺再整備の展開方向が注目される。