▼先の日曜日、春の陽気に誘われ、近所の琴似発寒川沿いの遊歩道と西野緑道を歩いた。函館では同日、五稜郭公園のソメイヨシノが開花したが、散歩しながら眺めると札幌もあと一息のよう。ただ紅梅が幾本かまぶしいくらい鮮やかに咲いていて、目を楽しませてくれた。河川敷からは親子連れや仲間同士でピクニックに興じる歓声が響く。焼肉のおいしそうな香りも漂う。暖かで穏やかな春の一日である。
▼同じ春の一日ではあるが、暖かで穏やかどころでなく、熱く激しい場所もあったようだ。衆院の補欠選挙が行われた北海道5区である。自民党が候補擁立を見送った京都と違い、こちらは与党陣営と野党陣営の正面対決。双方が次々と幹部を送り込む総力戦の様相を呈した。当のボクサーより、互いのセコンドやコーチの方がさかんにパンチを繰り出していたようだ。結果、花を咲かせたのは自民党新人の和田義明氏。町村信孝前衆院議長の「弔い合戦」で後継ぎとして面目を保った。
▼和田氏にはぜひ新風を期待したいが、さて今回の補選、夏の参院選の前哨戦として通常ならもっと騒がれたはず。そうならなかったのはこの週末、国民の関心が熊本地震の被災者に集まっていたからだろう。余震はなかなかやまず、大雨にも見舞われた。捜索活動は困難を極め、住民の避難に乗じた空き巣や窃盗事件まで発生しているそうだ。被災者らの心労はいかばかりか。少し前まで現地の人も穏やかな春の散歩を楽しめていたろうに。一日も早く、そんな日が戻ってくるといい。