▼内閣官房参与として芸術文化政策の立案に関わった経験を持つ劇作家・演出家の平田オリザ氏は、消費不況を乗り越える手段についても一家言あるようだ。『芸術立国論』(集英社新書)に書いている。「モノ」が幸せをもたらしてくれない今、人々が切実に求めているのは「美しい自然環境や人生を豊かにしてくれる芸術作品」だとし、そういった文化を広範に創造することで経済を活性化すべきという。
▼なるほどその通りかもしれないと納得したのは、先日行った道立近代美術館の横山大観展が相当なにぎわいだったからである。生々しい話で恐縮だが、これなら芸術が消費を動かす力になるというのも決して大げさでない。さすが近代日本画の巨匠と感心した。今回はきらびやかで豪華なびょうぶ「紅葉」や輝く富士を描いた「神国日本」など、島根県の足立美術館が所蔵する名作50点を公開している。筆者のような門外漢が見ても圧倒されるのだから、愛好家にはたまらないだろう。
▼あすから黄金週間である。仕事で忙しい人もいようが、近場の美術館なら何とかなるのでないか。たまには日常を離れ芸術に触れてみるのも悪くない。連休中も函館美術館「フランス近代美術をめぐる旅」、旭川美術館「つかまえる風水森をめぐるイメージ」、帯広美術館「篠山紀信展 写真力」など各地で楽しみな展示がある。家族らと経済活性化に貢献してみるのもまた一興である。