▼「おせっかい」はいらぬこと、と考える人が今は多いのでないか。かつては近所付き合いの潤滑油として、結構な役目を果たしていた。昭和の名女優沢村貞子の母も、かなりのおせっかい焼きだったそう。随筆集『わたしの茶の間』(光文社)で、母の姿を振り返っている。隣で赤ん坊が泣くのを聞きつけると「何をおいても庭づたいに飛んで行った」。困っている人を見捨てておけないたちだったという。
▼おせっかいは時々行き過ぎることもある。ただ助け合って生きていくにはそんな人情も欠かせなかったろう。国際社会も事情は同じなのかどうか。6日に安倍晋三首相とプーチンロシア大統領が首脳会談をした。どうやら安倍首相がお隣のロシアまでおせっかいを焼きに行ったようだ。安倍首相はプーチン大統領に経済協力などを提案したらしい。ロシアは今、ウクライナ侵攻に端を発した西側の経済制裁に苦しんでいる。弱みは見せないものの内心、日本の提案を喜んでいるはずだ。
▼孤立を深めるロシアにとって、この時期の安倍首相訪問は渡りに船ではないか。もちろん日本も北方領土問題を前に進めたいとの思惑があってのこと。今回の首脳会談では、「新たな発想に基づくアプローチ」をすることで意見が一致したそうだ。道民として期待感が高まる一言である。外交は言葉一つで劇的に事態が動くことも少なくない。大切なのはお互いの信頼だろう。お隣のために少しおせっかいを焼くくらいでないと、いつまでたっても関係改善など望めないのかもしれぬ。