▼本紙の読者には、経営幹部や部下を率いる立場の人が少なくないだろう。組織をまとめ上げるのに日々頭を悩ませているに違いない。第一生命のサラリーマン川柳に以前、こんな手厳しい一句があったのを覚えている。「社の行く手社長ひとりが通せんぼ」(狂介)。社会経済の状況を読み、手を打ったものの空回り。批判ばかりが聞こえてくる。上に立つ者の苦労は、なかなか理解されないもののようだ。
▼書店ではタイトルに「リーダー」と付く本につい手が伸びるのでないか。最近、そのテーマを扱ったある新書が11万部を超えたと聞き読んでみた。アイドルAKB48グループ元総監督高橋みなみさんの『リーダー論』(講談社)だ。今25歳だが、300人以上のメンバーをまとめ上げてきたという。その努力と実践には感心させられた。リーダーという肩書は皆が言うことを聞いてくれるツールでなく「みんなの目を厳しくさせるツールだ」。そんな一言にも強い責任感が垣間見える。
▼さて、それでは16万人以上の職員を抱える組織の、67歳のリーダーの責任感はどの程度のものだろう。舛添要一東京都知事が13日、記者会見で政治資金の私的使用疑惑について釈明した。いわく、会計責任者が―、法的には―、単なる間違いで―。弁舌こそ巧みだがどうにも言い訳にしか聞こえない。高橋さんはリーダーの条件にも触れていた。「言っていることと、やっていることを一致させる」。舛添氏なら多分こうだ。「やっていることを、無理やり一致するよう言いくるめる」