▼「おにぎらず」と聞いてすぐピンとくる人は、流行に遅れをとっていない人だろう。その正体は、のりにご飯を載せ、好みの具を置き包むだけの簡単料理。握らないため「おにぎらず」である。もともと漫画『クッキングパパ』(うえやまとち作)で25年ほど前に紹介されたものというから、筆者も読んでいたはずだがとんと覚えがない。手軽に作れる上、具も自由に使えて華やかにできることが特長とか。
▼最近、再びWebの料理サイトで取り上げられ、瞬く間に人気に火が付いたらしい。今度の週末、道内多くの小学校で運動会が予定されているようだ。その「おにぎらず」もきっと、お母さんやおばあちゃんが早起きして作った弁当に入っているだろう。「空を割る音の溢れし運動会」(戸澤てしほ)。軽快な音楽が流れる中、子どもたちは懸命に跳び、走り、踊る。両親や祖父母の応援もどんどん熱を帯びていく。昼には子どもを囲み皆の笑顔がはじけるだろう。幸せな風景である。
▼この幸せは子どもがいるからこそだが、いつまでも続くかというとさほど楽観できない。総務省が先頃発表した人口推計によると、ことし5月1日現在の14歳以下の子どもの数は1604万人(概算値)で、前年に比べ11万人も減っているのである。ピークだった1954年のほぼ半分になり、減少傾向はさらに続いているというのだからいささか深刻だ。そのうち運動会そのものが少なくなり、「おにぎらず」どころか、子どもがいなくて「おにぎれず」になってしまうかもしれぬ。