▼国にはそこならではの文化や習慣があるため、他の国から見ると随分滑稽に思えてしまうことも少なくない。『世界の日本人ジョーク集』(中公新書)で読んだのだが、インドにこんなジョークがあるという。列車の遅れが常態のインドではそれに目くじらを立てる人などいない。ところがある日、列車が定時に発車し多くの人が乗り遅れた。怒って抗議する人に駅員は答える。「今のはきのうの列車です」
▼きょうの列車が来るのはまだ先だからご安心を、というわけ。これで乗客が喜んだかどうかは分からないが、ダイヤ厳守の日本では考えられない。そんな日本での今回の事態である。乗客が腹を立てるのも当然だ。JR北海道指令センターのシステム不具合で、千歳線と室蘭線の運行が5月30日まで3日間連続して混乱した件である。合計で140本が運休、3万人以上に影響が出たという。仕事や通学、観光など全てに利用される幹線だけに迷惑を被った人は多方面にわたったろう。
▼28日に信号やポイントを制御する装置が水に漬かり、異常が起きたそうだ。北海道新幹線という華々しい話題はあったものの、このところJR北海道からは、事故やトラブルばかりが聞こえてくる。足が故障続きでは北海道も元気には走れない。一体どうしたことかと道民も気をもんでいよう。先のジョーク集には旧東ドイツの運行状況を示すこんな場面も記されていた。列車が2時間遅れで到着すると、「駅構内は大きな拍手に包まれた」。JR北海道も拍手が必要になるだろうか。