▼実現不可能だと分かっていても、その話になると妙に熱が入るということがある。道民にとっては「北海道独立」というテーマもその一つだろう。そんな思いもあってか、先日、書店で雑誌『SINRA』(シンラ、天夢人)7月号の表紙に「北海道独立論」と大書してあるのを見て思わず買ってしまった。鮮やかな蝦夷錦を身にまとって立つ「夷酋列像イトコイ」の絵も強い存在感を放っていたのである。
▼読むと声高に独立を主張する内容でなく、開拓から約150年を経た今、あらためて本道が持つ大きな可能性を考えたいとの趣旨だった。道産子の一人としては、大きな可能性と言われると何か褒められたようで悪い気がしない。まあそれで満足してしまうのが悪い癖でもあるのだが。ところで、道庁もこの北海道命名から150年の節目に向けて動きだしたようだ。先頃、歴史や先人の偉業を振り返り新たな一歩を踏み出す「北海道150年事業」を検討する会議が開かれたという。
▼事業を象徴する人物には松浦武四郎を据えるそうだ。アイヌ民族と親しみながら本道を詳しく調査し、「北加伊道」の名を明治政府に提案した名付け親でもある。うってつけの人物だろう。ただ片手落ちの感がないでもない。アイヌからも選ぶべきでなかったか。命名後の開拓史と、それ以前の自然と豊かに暮らすアイヌの文化を一つの視野に収めてこその北海道のはず。象徴が二人ならイメージもしやすかったろう。一人でと言われたら、武四郎はまた家に帰ってしまうかもしれぬ。