古代中国の故事を元にした言葉の一つに、今でもよく使われる「登竜門」がある。竜門とは文明発祥の母体となった黄河の上流にあるとされる激しい急流。そこをさかのぼることのできたコイは竜になると信じられていたため、成功するには越えねばならぬ難関を意味するようになったとか
▼この故事が日本に伝えられて庶民の「節句のぼり」の風習と結び付き、「こいのぼり」に形を変えたのはご存じの通りである。端午の節句にはまだ1カ月ほどあるが、気の早い店が飾り始めたのを見たからかもしれない。北海道日本ハムファイターズの黒からエンゼルスの赤へと、まとう色を変え勢いよく米メジャーリーグの急流を登っていく姿が伸び伸びと空を行くこいのぼりのイメージと重なった。大谷翔平選手のことである
▼現地時間1日に投手としてマウンドに立ち、開幕初登板で初勝利。続く3日、4日、6日の3試合では打者として連続本塁打を記録し、8日には再び投手に転じて12三振を奪い2勝目を挙げた。試合映像を見ると、米選手は手前で鋭く落ちる大谷選手のスプリットにまるで歯が立たないようだ。力まず軽々と本塁打を放つバッティングも見事というほかない。いやはやこれほどとは
▼この活躍に興奮冷めやらぬ人も多かろう。泣く泣く米国に送り出した本道のファンならなおさらである。ただし試練はこれから。他球団は徹底して研究、攻略をしてこよう。まあ、心配はいるまい。まだ若い上に勉強熱心。どれだけ伸び代があるか想像もつかない。竜になってもさらに成長は続くのでないか。