再建に身投じ

2016年07月06日 09時18分

 ▼財政再建団体の制度を霞が関用語で「見せしめ」というのではないか。財政破綻後に夕張市が置かれた過酷な状況を見るにつけ、度々そんな言葉が思い浮かんだものだ。税負担は増し、行政サービスは削られ、新規事業など及びもつかない。計画では再生をうたいながら、実際には衰退と人口流出を早めているようにさえ感じた。もとより市に責任がなかった訳ではない。再建の申し出をしたのも市である。

 ▼前夕張市長の藤倉肇氏が3日、亡くなったそうだ。財政再建団体に移行したばかりの市に、希望の道筋をつけようと尽力した人である。菅義偉総務大臣(当時)が計画に同意し、財政再建団体に移行したのが2007年3月のこと。藤倉氏は同4月22日、新市長に当選し、後藤健二市政を引き継いだのだった。走り出しは、とにかく苦労の連続だったらしい。箸の上げ下ろしまでとは言わないが、何をするにも総務省の許可がいる。不便を強いている市民からの突き上げも厳しかった。

 ▼困難を乗り越える原動力になったのは郷土愛だったという。氏は炭鉱マンの父を持つ生粋の夕張っ子である。藤倉氏が策定した再生計画は、11年4月にバトンを渡された鈴木直道市長の下でしっかりと実を結んだ。ことしは財政破綻から10年目。本当の意味で再生に踏み出す準備が整いつつある。鈴木市長は6月3日付本紙インタビューでこう話していた。「仮に20年間で人口が半減してもその人たちが住んでいて幸せな気持ちだったら勝ちだと思う」。藤倉氏の夢はまだ生きている。


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