▼今も昔も三度の飯より酒が好きという人はいるようで。落語の「禁酒番屋」にもそんな人が出てくる。酒で不祥事を起こしたある藩が禁酒令を出し、家中に酒が入らないよう取り締まり所を設けた。それでも酒を飲みたい近藤氏は工夫して酒を届けるよう酒屋に頼む。店の者は最初に水カステラ、次には油と偽って番屋を通ろうとするがすぐにばれて大目玉を食う。悔しさのあまり酒屋は最後に…という噺。
▼落語にもあるくらいだから、江戸時代も飲酒を原因とする不祥事や事件は絶えなかったのだろう。藩も家来の不始末には苦労したようだ。残念ながら時代が進んでも酒がしばしば社会問題を引き起こす状況に変わりはない。大きな問題の一つは小樽や砂川であったような残酷な交通事故である。警察が現代版「禁酒番屋」といえる取り締まり検問をしなければならないのもそれ故だ。警察庁によるとことし5月末現在で、飲酒に絡む死亡交通事故が前年より11件多い91件発生している。
▼きょうで11日から実施されていた「夏の交通安全運動」が終わる。ただ、本道の行楽シーズンはこれからが本番だ。避暑や観光、夏季休暇、お盆、各種イベントなどで人の移動と交流が盛んになれば、酒を飲む機会も増えるだろう。折しもきょう20日からは、さっぽろ大通ビアガーデンも始まる。暑い日に冷たいビールの誘惑を退けるのは難しいが、対処は簡単である。飲んだら運転しない。それだけ。もし飲んで運転すれば、待っているのは落語のオチでなく人生からの転落である。