トルコの苦境

2016年07月21日 09時37分

 ▼作家半藤一利氏は、著書『昭和史1926―1945』(平凡社)で日本陸軍の一部が暴発した二・二六事件のその後を分析している。最も適切な説明だと思うとして松本清張の『二・二六事件』(文芸春秋)を挙げ、重要な箇所をこう引用していた。事件以降「軍部は絶えず〝二・二六〟の再発をちらちらさせて政・財・言論界を脅迫した」。つまり軍が国民の恐怖をあおり実権掌握に利用したのである。

 ▼トルコで15日発生したクーデター未遂事件のその後の展開を見ていると、何やら二・二六事件後と同じ図式が出来上がりつつあるようで少々気味が悪い。エルドアン大統領はクーデターに関わったとされる者を片端から拘束し、厳罰に処すため死刑制度復活も辞さない構えだという。エルドアン氏はこれまでも意に染まない人物や言論、街頭デモを徹底して弾圧してきた。いわゆる強権型の指導者である。この5月にも大統領の権力強化に慎重だった首相を辞任に追い込んだばかりだ。

 ▼とはいえトルコが今かなり不安定な状態にあるのも事実。過激派組織「IS」が活動するイラクやシリアと国境を接しているためテロや紛争が絶えず、難民流入にも悩まされている。大統領が権力の集中を狙うのにはそんな背景もあろう。それでも人々の恐怖をてこに権力を強めるやり方は再び国内に騒乱の種をまくだけでないか。もちろんトルコ国民だってそんなことは分かっているはず。ただ分かっていても権力者からの弾圧におびえて口に出せないとすれば息苦しいことである。


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