▼きょうは「地名の日」である。本道にゆかりのあるアイヌ語地名研究家山田秀三の命日などにちなんで決められたものだという。実際、小欄も氏には随分お世話になっている。といっても会ったことがあるわけではない。著書『北海道の地名』(北海道新聞社)を座右に置き、よく参照しているのだ。本道はアイヌ語の地名がほとんどのため、意味を知ればその地域の特徴がありありと見え、重宝している。
▼人は古くから、地名に知恵を刻み付けてきたということだろう。ところで、最近読んだ地名に関する本にも、災害を避けて安全に暮らすための知識を教えられた。少し紹介したい。地名情報資料室を主宰する楠原佑介氏の『地名でわかる水害大国・日本』(祥伝社新書)がそれだが、危険な場所は地名に示されているというのである。例えば「押」の字が付けば堤防が決壊する所、「龍」は水が流れ出す先端といった具合。「井」は井戸でなく川があることを表していた字なのだそう。
▼2014年に広島県安佐南区八木地区で発生した土砂災害についても検証していた。「ヤギ」音を持つ地名はかつて焼畑だった所が多く、地滑りや土砂崩壊が起こりやすいというのだ。これが事実とすれば無視するわけにいかない。命を守るため過去の人々から伝えられた重要な申し送りであろう。楠原氏も、地名に示される土地条件を無視した都市開発が「災害の根本原因」と警鐘を鳴らしていた。もうすぐ台風シーズン。地名に関心を持ち、災害に備えておくに越したことはない。