▼農林水産省が今週の初めに、2015年度の食料自給率(カロリーベース)を発表していた。6年連続で39%だったという。数字で「サンキュー」が続いているわけだが、この低さでは感謝する気にもならぬ。1965年度には73%あったことを思うと、何とも頼りない数字である。食生活の変化で自給率の高いコメの消費が減り、資料や原料を海外に依存する畜産物や油脂などの消費が増えたためらしい。
▼そういえば、と思い出したことがあった。いつも手元に置いている短歌選集の中の、現代歌人の作品を読んでいたときのことなのだが、例えば―「生没年不詳の人のごとく坐しパン食みてをり海をながめて」(大塚寅彦)、「砂浜のランチついに手つかずの卵サンドが気になっている」(俵万智)。パン食を織り込んだこんな歌は割合によく目にするのだが、米食に触れたものはあまり見当たらないのだ。時代の空気に敏感な歌人のことだから、きっと変化を読み取っているのだろう。
▼ところで農水省は都道府県別の自給率も出していた。2014年度の概算値だが本道は208%と堂々の第1位。秋田190%、山形141%がこれに続く。ちなみに東京は1%しかない。これではTPPで、食料のほぼ全てを外部に頼る東京と、高い供給能力を誇る本道に温度差があるのも当然だろう。秋の臨時国会はそのTPPが主要議題になる。担当は都知事選で深手を負った石原伸晃大臣だ。内閣改造で留任したものの、歌人のような鋭い時代の読みは期待できるのかどうか。