象徴とお務め

2016年08月09日 09時38分

 ▼子どものころは全く意味が分からなかった。「象徴天皇」のことである。最初に学んだのはおそらく、日本国憲法でだったろう。第1章が「天皇」である。その第1条にこうあった。「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」。まあ、子どもに理解できる文章ではない。たとえ大人が読んだとしても一知半解といったところでないか。

 ▼天皇陛下のこれまでのお務めは、象徴天皇というものの姿を、国民に分かりやすく示そうとしてなされてきたことだったそうだ。きのう、「象徴としてのお務めについての陛下のおことば」がビデオメッセージとして公表された。この中で陛下は、「国民の安寧と幸せを祈ること」と同時に「人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うことも大切なことと考えてきました」と述べられた。だからこそ自ら各地に足を運び、国民と触れ合うことで信頼を築き上げてきたのだ。

 ▼被災地や先の大戦の激戦地を訪れているのも国民の気持ちに寄り添っているからだろう。そのお務めなしには象徴天皇もないとの強い自覚があったようだ。今回の「おことば」は、高齢や健康上の理由から「全身全霊をもって」お務めができなくなることに懸念を表明したものという。「生前退位」の文言こそ使ってはいないが、憲法第1条を順守するための最善の方法について、国民にも考えてほしいということに違いない。簡単な問題ではないが、ねぎらいの答えを出せるといい。


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