女子中学生安西こころは「朝、学校に行く時間になると、仮病じゃないのに、本当におなかや、時には頭も痛くなる」。不登校の子どもによく見られる、心因性の身体症状が現れたのである
▼実はこの少女、ことし「本屋大賞」に選ばれた辻村深月さんの『かがみの孤城』(ポプラ社)の主人公。物語では不登校に陥ったこころら7人の児童生徒が鏡の向こうの世界にある城に集められ、何でも願いがかなう鍵を探す。意表を突く仕掛け満載のファンタジー小説でとても面白く読ませてもらったのだが、同時に不登校について相当丹念に調べているようで大いに勉強もさせられた。不登校では本人はもちろん、親も教師もかなり苦しんでいるのだとか
▼ここ数年、現実でも不登校は増加の一途をたどっている。文科省が昨年10月に発表した小中学校調査によると、01年度から12年度まで減少傾向にあったものの13年度に反転。16年度には前年度比6.7%増の13万4398人と減少前の00年度水準に戻ってしまった。増えた原因は不明だが、不登校の理由は小中共に「いじめを除く友人関係」が飛び抜けて多い。グループに入れなかった、気の合う友達がいない、学級で浮いている…。最初はささいなことでも一度ずれた歯車は容易に元に戻らない
▼入学や進級、クラス替えから1カ月。学校では人間関係もほぼ固まったころだ。皆うまく自分の居場所を見つけられただろうか。ゴールデンウィーク明けも不登校が起きがちな時期。子どもたちだけで解決できないときは、大人が温かくしっかり支える必要がある。