隣に住む人は選べないから―、との言葉をよく耳にする。実際、性格の合わない人、平気で迷惑を掛けてくる人と隣り合って暮らすことほど悩ましいことはない。そんな経験をしたことがあるという方々も少なくないのでないか
▼テレビでも定期的に近所の困った人が取り上げられている。理由を聞くとこんな具合だ。一日中騒音がひどい、ごみが家の外まではみ出している、公用の空間を私物化して他人を排除する。いざこざではないが作家の向田邦子さんにも気になることがあったそうだ。エッセイ「隣りの責任」に記している。近所に大理石風外観を持つしゃれたビルができた。見ると1階には豪華な美容室と魚屋が並ぶ。ただこの魚屋、魚箱は汚れたまま外に山積みの上、全体に不潔でいつも臭い。向田さんは美容室に同情せずにはいられなかったという
▼皆が気持ちよく過ごすためには、できる範囲でお互いに気を使い合うのがご近所付き合いの鉄則だろう。それがないと途端にぎすぎすした関係になる。国際社会も原則は同じ。イスラエルとパレスチナ自治区の話である。この問題は第2次大戦後、ユダヤ人らがパレスチナ人の土地に無断で巨大なマンションを建て権利を主張しているようなもの。隣人への配慮はほとんどなかった
▼そこに今回降って湧いたトランプ米大統領の大使館エルサレム移転。イスラエルのみに肩入れする行為はイスラム社会を怒らせるに十分だ。これまでの経緯から米国には責任もあるはずだが、トランプ氏にとって中間選挙の票にならない者は隣人でないのかもしれぬ。