スーパーで商品を籠に入れてレジに並んだとき、「何やら見慣れぬ機械があるな」とは思っていた。店員さんはいつも通り価格を読み取った後、「お支払いはこちらで」。以前はなかったその機械は無人精算機だったのである
▼最近、幾軒かでそんなことが続いた。それぞれ異なる系列の店でのことだから、同時に進んでいる流れだろう。正直言って、買い物の最後に妙な肩透かしを食った気分ですっきりしなかった。商売で最も大切なところは商品とお金を交換する部分だろう。いくら効率性と合理化を旨とするスーパーであってもそれは変わらない。客が欲しいものを手に入れ、店が利益を得る現場なのだから、自然、お互いに笑顔と感謝の言葉も出る。わずかばかりとはいえ心の交流もあろう
▼その小さな取引の締めが、「アリガトウゴザイマシタ マタノゴリヨウヲオネガイシマス」の電子音では何とも味気ない。笑顔も感謝も入り込む隙間がないではないか。まあ、当方の考えが古いだけかもしれないが。人の仕事を機械に置き換える動きが今、急激に進んでいる。レジのように単純なものだけでなく、AI(人工知能)やロボット技術の進展で相当複雑な作業もこなせるらしい。人と機械が仕事を奪い合う時代だ。世界経済フォーラムは年初に、最先端技術が融合する「第4次産業革命」により、5年先には主要国・地域経済圏で710万人が職を失うとの予測を発表していた
▼時流にあらがうのは難しいが、人が笑顔を失わぬ革命をと願うばかり。先のレジではもう、少し消えかけていた。