奇抜な発想で知られる作家筒井康隆の『現代語裏辞典』(文春文庫)に、「空港」の項の説明としてこうあった。「垂直離陸できる航空機ばかりになればただの空き地」。なるほどその通り。思わずニヤリとさせられたが、どうやら現実は逆方向に進んでいるらしい
▼『ニューズウィーク日本版』(10月11日号)の「未来の空港」特集によると世界は今、メガ・ハブ空港という巨大化競争の時代に入っているのだとか。現在はまだどこにもないが、年間1億5000万人以上の旅客処理能力を持つ空港を通称でそう呼ぶ。羽田の2倍の能力だ。同誌が「モンスター」と言うように途方もない規模である。近い将来、ドバイやイスタンブールで供用開始を予定しているという
▼そんな華々しい計画がある半面、世界の空港の4分の3は収益を上げていないというから驚く。黒字を目指して手を打ちたくとも地理的制約や増便の難しさ、施設拡張の限界、騒音など空港特有の課題が数多く目の前に横たわり簡単ではない。ところで、利便性の向上と魅力づくりが必要なのは、国内の地方空港も同じである。本道でも、新千歳と釧路、稚内、函館、旭川、帯広、女満別の7空港の運営権を一括で民間委託する取り組みが進む
▼先日も北海道経済連合会など道内経済4団体が国土交通省と道に、一体的運営で地域活性化の最大の果実が得られるよう提言・要望書を提出していた。つまり7空港を一つの巨大空港に見立てるわけだろう。楽しみである。どれだけの可能性がこの空港から未来に向け離陸していくのか。