東京都が移転計画を進める豊洲市場の盛り土問題で、石原慎太郎元都知事が「東京は伏魔殿だ」と言ったのはまだ記憶に新しい
▼「悪事・陰謀などが陰で絶えずたくらまれている所」(『広辞苑』第三版)の意味で使ったのだろうが、新施設の安全性や機能にほぼ問題がないと分かってきた今となっては、その言葉も落ち着き所を失った。と、思っていたら、何とお隣の国がその言葉を引き受けてしまったようである。韓国の朴槿恵大統領が親友の民間人女性に機密を漏らし、助言を仰いでいたことが明るみに出た件だ。それだけでも重大な事態だが、その女性は大統領との親密な関係を利用して数々の不正も働いていたという。大統領側近も深く関与していたというから、国政の中枢である大統領府がまさに伏魔殿と化していたわけである
▼検察の特別捜査本部は3日、職権乱用共犯と詐欺未遂の容疑で女性を逮捕。きのう、朴大統領も記者会見で疑惑について謝罪し、捜査には誠実に臨むことを表明したそうだ。理解に苦しむのは、発覚してすぐ朴大統領が秘書官ら側近8人を更迭して、問題をやり過ごそうとしたことである。これでは取り巻きが全て勝手にやったと言わんばかりではないか。しかもそれで収まらないと見ると今度は独断で野党に近い学者を新首相に指名し、当の野党から総スカンを食う始末
▼打つ手がことごとく責任逃れのように見える。国民も怒り心頭に発していよう。韓国ではよく政権末期に大統領絡みの醜聞が起きるが、魔がぬくぬくと育ちやすい環境でもあるのだろうか。