失業率と自殺者数との間に相関があるのはよく知られている。分かりやすいのは時系列グラフで、両者はほぼ並行して動く。それを語る上でしばしば例に出されるのが1998年である
▼この年、自殺者数が前年から一気に8000人増え、3万2000人に達した。20年前の話だが長く事業をしている人にとっては忘れられない年だろう。金融機関が相次いで破綻した97年の翌年。連鎖倒産が深刻だった時期である。本道経済を大混乱に陥れた拓銀破綻もこのころだ。金融機関の経営に乱脈融資など失敗があったことは論をまたない。ただ、過熱するバブルを抑えるための公定歩合引き上げや不動産融資の総量規制、危機発覚後の公的資金投入見送りといった政策の不手際が問題を広げ傷を大きくした側面も否めない
▼その結果がこの自殺者数の激増なのである。凶器のはずもない政策が間接的に人の命を奪うことになった実例だろう。そこで気になるのが来年10月に予定される消費税率10%への引き上げである。政府はおとといの経済財政諮問会議で「骨太の方針」骨子案を示し、税率引き上げに備えて思い切った財政出動を行う構えを見せた。いよいよか、の思いである
▼その差2%だがこれを小さいと考える人はあまりいないのでないか。消費税には真綿で首を絞めるようなところがある。必要な物さえ買い控えざるを得なくなるなら、やはり政策が命を奪うことにもなりかねない。財政出動も大切だが、負担が重荷にならないよう経済を確実に成長させていくことこそ政府がまず目指すべき方向だろう。