譲位議論混迷

2016年11月28日 09時42分

 日本人が独自の文化を多く生み出せた理由について社会学者の橋爪大三郎、大澤真幸両氏が語り合う対談本『げんきな日本論』(講談社現代新書)を最近、興味深く読んだ

 ▼土器や文字、幕藩制などいろいろな話題が俎上(そじょう)に載せられるのだが、中でも目を引いたのはイエ制度の特徴が「本質的に事業体」との大澤氏の指摘である。事業体だからこそ、個人の意思を超えて存続問題が重要になるのだという。これに対しては橋爪氏も、「日本のすべての業務を、それぞれのイエに分担させる、という壮大なシステムです」と応じていた

 ▼戦後、イエ制度は民主主義に反するからと廃止されたが、現代日本にもそれはまだ伏流水のように脈々と流れている。時として「家」へのこだわりを色濃く反映した出来事が起こるのもそのことと無縁ではなかろう。天皇陛下の譲位問題もそうだ。「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」(日本国憲法第1条)の役目を担う「天皇家」の将来を左右する難問である。譲位を進めたい政府は今、頭を抱えているらしい。「天皇の公務の負担軽減に関する有識者会議」の議論が混迷しているのである

 ▼これまで2回開いたヒアリングで専門家の半数以上が、陛下存命中の譲位に慎重・反対の立場という。どうやら家の安定に重きを置いているようだ。ただ報道各社の世論調査では国民の8―9割が譲位に理解を示している。多くの国民の胸の内は、陛下をねぎらいたい気持ち一つだろう。政府はこれほど象徴的な世論も無視するわけにいかないのではないか。


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