「調布基地を追い越し 山にむかって行けば 黄昏がフロント・グラスを 染めて広がる」。見たこともないのに、聴いていると不思議とその情景が目に浮かぶ。名曲の証しだろう。ユーミンこと松任谷由実さんの『中央フリーウェイ』である
▼高速道路は、一般道路と違って信号機や歩行者へのストレスがない。安全に注意しながらも、少し開放的な気分になれるのはそのおかげである。歌になるゆえんでもあろう。ところがそんな高速道路で、おちおちドライブを楽しんでいられない出来事が増えているらしい。「逆走」である。2014年までは年間200件程度で推移していたが、15年は259件と急激に増えた。対向車が同一車線を走ってくるのだから、驚くのも当然だ。ICやJCT付近で迷い込む例が多いと聞く
▼国土交通省などの試算によると、逆走による死傷事故は通常に比べて約4倍、死亡事故に限ると約40倍にもなるという。最近は2日に1回の頻度で起こっているのだとか。人ごとではない。正しく走っていた人が巻き込まれて死亡する悲惨な事故も既に発生している。逆走の頻発に何とか歯止めをと、東日本・中日本・西日本の高速道路各社が先月下旬から、「逆走対策技術」の公募を始めたそうだ。道路、運転者、自動車それぞれの側面から問題に迫り、逆走に気付かせたり、発生しても事故に至らせない技術を個人や大学、民間企業に求めるとのこと
▼これで有効な対策を見つけられれば、逆走車の心配をすることなく、ユーミンを聴きながら快適なドライブが続けられる。