アモルフィ(本社・札幌)は、住宅メーカーやマンションデベロッパーなどの営業ツールに、VR(仮想現実)を使った「アルカサルVR」を提案している。現地に出向くことなく、手持ちのスマートフォンやパソコンの画面から仮想で物件の内覧をするシステム。室内を自由に移動したり、設備などの情報をテキストで確認できるので、営業スタッフが立ち会わなくても部屋の様子が把握できる。不動産業界だけでなく、ホテルやレストラン、結婚式場など商業施設の歩くパンフレットとして広く使ってもらいたい考えだ。
米国・カリフォルニア州に本社を置くMatterPort(マターポート)社の技術。アモルフィは、同社とのライセンス契約によって営業活動を展開している。
専用の4Kカメラを使い、部屋の十数カ所を撮影。天井と壁、床までの距離を赤外線で測りながら、複数画像を結合することで実物そっくりの3D空間をつくる。事務所や商業施設の場合、机や棚、照明、空調機など室内にある備物も鮮明に映し出す。
アルカサルVRでは、部屋の中を自由に行き来できるパノラマモードのほか、間取りの確認に便利な「フロアプランモード」と、部屋の断面を閲覧できる「ドールハウスモード」を用意する。
画面内に点在する情報ポイントをクリックすれば、部屋の広さや採光の具合を紹介するテキスト情報が表示される。動画を埋め込んだり、別のウェブ画面にリンクすることもできる。
新しい形の営業ツールとして、主に住宅メーカーやマンションデベロッパー、工務店、賃貸不動産管理会社向けに提案している。同社に物件の3D化を依頼すると、おおむね撮影日から1―2日で成果品を引き渡す。
本州の大企業を取引先に持つ不動産賃貸会社の場合、顧客に北海道へ来てもらわなくてもVRで物件を内見でき、春先の異動シーズンを効率的にこなすことができる。都心部など立地の限られる地域では、モデルルーム代わりにVRプロモーションを使うという方法もある。
長谷川真社長は「昨今の新築賃貸住宅では、入居希望者の内覧を完成引き渡しまで認めないというケースが増えている。完成時までに満室にして経営を安定させたい家主と、内覧できないなら決められないという入居希望者とで、思惑に相違が生じている」と指摘。そうした課題の解決に向け、アルカサルVRによるサービスを考案した。
「モデルルームや住宅展示場に代わるプロモーションのほか、ビルや公共施設の完成記録、ホテルや民泊向けのウェブ紹介など幅広く使ってもらえれば」と話している。