きのうは夏目漱石が亡くなってちょうど100年の命日だった。漱石といえば日本で最もよく知られた明治の文豪だろう。いまだに人気も高い。作品の魅力が現代でも薄れていない証拠である
▼漱石は文学者というだけでなく、鋭い批評家でもあった。『吾輩は猫である』のような娯楽作品にも随所に社会への痛烈な風刺が見られる。きょうは漱石に敬意を表して、ネコになったつもりで最近の出来事を眺めてみたい。「近頃、人間の集会ではIR法案なるものが話し合われているとか。なに、猫だって寝てるふりをしながらテレビの音くらい聞いているのである。ホテルやカジノを集めた統合リゾートを造るというが、全く人間の騒がしいもの好きにはあきれる。日だまりに寝転んでいる以上の幸せがこの世にあるものか
▼大体、主人がパチンコから帰ってきたときといったら、ただのんびり寝ているだけの吾輩を怒鳴り散らすだけ。これがカジノなんぞできた日には皮を三味線屋に売られかねない。迷惑な話だ」「TPPが本決まりになったようである。いやPPAPだったか。吾輩横文字には少々弱い。主人はアメリカ産牛肉が安く食えるなどと大層浮かれているが、国産のコメや牛乳への打撃は避けられぬというではないか。合点がいかぬ。吾輩の愛する猫まんまはどうなる
▼まさか知恵自慢の人間が問題に頬かむりでもあるまい。もしわれらの安楽な生活に響くようなら猫族挙げてストを打ち、金輪際、人間とは遊ばないことにするから覚悟されたい」。さて、漱石ならネコに何と語らせたろう。