宿泊施設 多様化に弾み 民泊新法施行で市場形成期待

2018年06月15日 08時30分

 住宅宿泊事業法が15日に施行され、宿泊料を取り旅行客を住宅などに宿泊させる民泊が解禁になる。違法営業などが問題視されてきたが、ルール化により、好調に増加する訪日外国人旅行客など来道客の新たな受け皿づくりと市場形成が期待される。事業者側には営業日数の上限など課された制約から事業性を疑問視する声も多いが、増大する宿泊需要への期待は大きく、宿泊施設の多様化に弾みをつける契機になりそうだ。(関連記事2、16面に)

■制約厳しく事業性疑問視も

 民泊はインターネットを使い、世界のどこからでも気軽に予約できる手軽さ、宿泊が安価で長期滞在しやすい特長から急成長した。

 これまでは国家戦略特区か旅館業法の簡易宿所の許可を得る必要があったが、民泊の明確な規定はなく、ネットでは許認可が判然としない物件が流通。適正に管理されず宿泊者の衛生、安全性への懸念、騒音など宿泊者と近隣住民とのトラブルが問題視されてきた。

 民泊新法では年180日の営業上限や苦情対応など運営や管理のルールを決め、都道府県などへの届け出制とした。

 トラブルの多かった家主不在型は地域住民の安心確保のため、道と札幌市が住宅街や小中学校周辺を対象に営業をさらに制約する条例を制定。15日から旅館業法と新法に基づき監視を始める。

 13日現在の届け出件数は道で126件、札幌市が534件の合計660件。民泊急成長を促した仲介サイト最大手の「エアビーアンドビー」に、ことし春まで道内2000件程度の物件が掲載されていたことを考えれば出足は鈍いが、東京都に次いで件数は突出している。

 事業者には営業日数や管理コストの上昇など制約が多く「ビジネスとしては厳しい」との見方が広がるが、インバウンドの拡大や、札幌市の冬季五輪招致による来道者のさらなる増加から市場拡大への期待も生まれている。

 賃貸住宅の管理業界では、人口減少で空き部屋が増えると予想される中、賃貸アパート、マンションの空室の有効利用策として民泊に注目している。

 日本賃貸住宅管理協会北海道支部の役員を務める日本地建(札幌)の岡実会長は「宿泊需要は今後も拡大する。増える空き部屋の有効活用に有望な市場」と展望する。

 業界では民泊や簡易宿所の許可取得で遊休不動産の活用を提案する企業が増えているが、物件の営業日数の制約や必要な設備のコスト、届け出に時間がかかることが課題となる。安全を担保した上で規制緩和を求める声は多く、同社も規制動向や採算性を見極めていく姿勢だ。

 不動産の活用提案を手掛けるマッシブサッポロ(札幌)は、住宅宿泊管理業に登録し運営代行業を始める。家主不在型の届け出物件約140件の管理を扱う予定だ。

 同社の川村健治社長は「規制が厳しく事業の魅力が低い。伸び悩む可能性もある」と指摘する一方「宿泊需要は今後も伸びる」として、宿泊サービスの多様化が有望なビジネスであると強調する。

 現在は旅館業法改正による基準緩和に目を向ける。民泊を含め規制緩和を不動産の活用、管理の提案に生かし、多様なニーズに合わせた宿泊施設形態を模索する考えだ。

 歴史的な建物の多い函館市西部地区は、古民家を宿泊施設にリノベーションする動きも活発化。ノースカントリー(札幌)は築約100年の建物を内部改修し、昨年7月に簡易宿所として開業した。

 「条件に合う空き家を活用し10施設ほど展開できれば」と同責任者の大沢直之さん。鍵の受け渡しなど総合窓口となる拠点を1カ所にまとめ、遊休不動産の再生でまちの活性化を目指す。

 観光で高いブランド力を持つ北海道。札幌市や観光地では、今もホテル建設が相次いでいる。民泊新法をはじめとする規制緩和が、この先、既存施設の枠にとらわれない、観光客ニーズに対応した、新たな宿泊施設、形態を生み出す胎動につながろうとしている。


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