稀勢の里横綱へ

2017年01月24日 09時32分

 室町期に活躍した能作者にして名役者の世阿弥は、能の理論を体系化した『風姿花伝』で「鬼の能」についてこう記している。「是、殊更大和の物也。一大事也」

 ▼大和とは世阿弥が属していた「大和申楽」の流派のこと。能にはいろいろな役があるが、中でも「鬼の能」はお家芸だから、そのつもりで技を磨き、気を入れて演じるべしというのである。観客に「大和の鬼は違う」と言わしめる何かがあったのだろう。相撲を日本人だけのものにしたいなどという偏狭な考えは持っていないが、やはり国技である。お家芸であってほしいとの願いは、少なからぬ人が抱いているのでないか。となれば日本出身力士の横綱が誕生するのはうれしいし、素直に喜びたい。実現すれば、日本出身の横綱は若乃花以来19年ぶりというのだからなおさらである。つまり21世紀に入ってやっと一人目

 ▼大相撲初場所で初優勝を決めた大関稀勢の里の横綱昇進がほぼ決まったらしい。あすの理事会で正式に決定の運びとなるようだ。横綱白鵬を破った千秋楽も見事だった。土俵際に寄せられ、残しに残してからのすくい投げ。稀勢の里は場所後、土俵際は「誰かに支えられた気がした」、初優勝は「自分一人でここまできたわけじゃない」と語っていた。奥ゆかしい人だ

 ▼ただの競技ではない何かに触れたくて、観客は相撲を見るのだろう。その何かは心技体の「心」にこそあるのではないか。『風姿花伝』にいわく、花は「心より心に伝はる」。相撲の花は横綱相撲だろう。稀勢の里の花も多くの人の心を打つに違いない。


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