子どものころ繰り返し聞いたため流行歌以上に耳に残っているのがCMソングである。共感する人も多いだろう
▼例えば日立製作所の「この木なんの木 気になる木」。青空の下の大きな木まで目に浮かぶ。松下電器産業(現パナソニック)の「明るいナショナル 明るいナショナル」。今でもふと口ずさんでしまう。東芝の「光る光る東芝 回る回る東芝」。特撮番組『光速エスパー』とともにくっきり記憶にある。そのかつての輝きはどこへやら。東芝は現在、光るものを失ってしまっているらしい。巨額の損失と赤字で首も回らなくなっているようだ。東芝が先日明らかにしたところによると、2016年4~12月期の損失額見通しは7125億円。米国の原子力発電事業の行き詰まりが主な原因だという
▼業績悪化は坂を転げ落ちるように進み、同期の連結決算も4999億円の赤字に陥っているとのこと。頼りの半導体事業の売却も先送りしたようだから、これで期末17年3月期の赤字もほぼ確定だろう。今更ながら、東日本大震災が引き金となった福島第1原発事故の影響の大きさに驚かされる。米国の安全基準も格段に厳しくなり、それが原発を主力の一つにしていた東芝の経営を直撃したわけだ
▼道産子だからだろう、東芝を含めた今の原子力産業が、エネルギー政策の転換と相次ぐ重大事故で閉山に追い込まれたかつての石炭産業とダブって見える。ただ、石炭の後には石油があった。原子力の後ろには有力なものが何もない。この東芝の問題、問われているのは実は日本なのではないか。