電話今昔

2017年03月03日 09時37分

 最近、道を歩いているとぎょっとさせられることが多い。例えば暗い夜道のこと。遠くから人が大きな声でしゃべりながら近付いてくる。まあ、そこまではいい

 ▼ところが近くまで来てもいるのはその人だけ。当方とすれ違う間もずっと一人でしゃべり続けている。こう言っては何だが、「危ない人なのか」との思いがよぎる。もうお分かりだろうが、スマホに付けたイヤホンとマイクで誰かと通話しているのである。作詞家の阿久悠は以前、著書『歌謡曲の時代』にこう書いていた。「今の時代の人々は常に透明人間化していて、自分の姿が他人からどのように見えているかと、気にしなくなっているのである」。阿久さんは携帯電話への懸念を示したのだが、スマホの登場でその傾向には一層拍車がかかっているようだ

 ▼きょうは電話を発明したアレクサンダー・グラハム・ベルの生誕170年の日。ベルもまさか自分の開発した技術が、未来の世で透明人間をつくり出すことになるとは考えもしなかったろう。遠藤周作のエッセー「父親、このリア王」にも電話の話題があった。氏の友人が娘の彼からかかってきた電話に出たときの話である。彼「A子さんは」、友人「おらん」。彼「どこへ」、友人「知らん」。彼「帰るのは」、友人「分からん」。不機嫌な顔で黒電話を握りしめる姿が目に浮かぶ

 ▼透明人間の不気味な独り言に比べ、こちらは何ともほほ笑ましい。とはいえ、今や彼氏彼女はスマホで直接連絡できるのだから、父親など天から蚊帳の外。昭和もグラハム・ベルも遠くなりにけり、だ。


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